モバイル通信技術や半導体技術の開発などを手がける米クアルコムはAIネイティブ6G技術、次世代ウェアラブル・プラットフォーム、Wi-Fiの革新について焦点を当てた展示にした。6Gについては、デバイス、RAN、エッジクラウド、クラウドを統合するAIネイティブな接続性とセンシングのファブリックからなるとし、同社は物理層技術、センシング統合、デジタルツイン処理、自律ネットワーク管理を開発し、2028年までの実用化を目指す。
展示の1つ、ウェアラブルプ・ラットフォームSnapdragon Wear Elite Platformは、最大2BパラメータモデルをサポートするHexagon NPUを搭載しオンデバイスAIに最適化したもの。強化したCPU/GPUパフォーマンス(5倍/7倍の向上)、改善したバッテリー寿命(30%超向上)、急速充電、包括的な接続性(5G RedCap、Wi-Fi、衛星、UWB、GNSS、Bluetooth 6.0)からなり、複数のフォームファクターに対応し、パーソナライズ化したAIエージェントを実現できるように設計されている。
産業IoTとプライベート5Gのユースケースを紹介もする。同社のプライベート5GとエッジAIを使用した自律工場モデルは、シーメンスとの協業で実現したもの。低遅延ネットワーク上での協調AGVとロボットアームによるリアルタイムのローカル意思決定、さらに安全性、効率性、生産性、データプライバシーのためのオンプレミスインテリジェンスを特徴とする。
新しい5GモデルプラットフォームQualcomm X105 Modem-RF Systemも披露する。リアルタイムの最適化とエージェントAIサポートのための第5世代AIプロセッサで、電力効率の良いRFトランシーバー(30%低消費電力)、ビデオ/データサービスを可能にする衛星NRNTNサポート、精度向上のための四周波GNSS、高度なRFフロントエンドコンポーネントからなる。2028年までに商業展開を目指すAIネイティブ6Gの基盤になる。
世界最速のWi-Fiクライアントチップも展示する。Wi-Fi 8をサポートし、4×4 MIMOにより最大11.6 Gbpsの速度と従来の3倍の性能を提供する。AIを統合し、単一のチップ上で複数の接続技術(Wi-Fi、UWB、Thread、Bluetooth)を管理し、信頼性と近接能力も向上させる。業界初の5×5ラジオを搭載したプレミアムティア製品のドラゴンウィングネットワーキングポートフォリオは、レイテンシを2.5倍削減し、スループットを40%向上させる高度な調整機能を備えている。ルーターに統合した六角形NPUを組み込み、ローカルAIオフロードによる応答性、プライバシー、AI駆動のトラフィック分析と自動トラブルシューティングを通じてネットワーク最適化を改善もする。
同社は、AIとコネクティビティが深く融合した未来を築いていくとする。AIを中核に据えデバイス、ネットワーク、ワイヤレスシステムを設計し、ワイヤレスアーキテクチャを根本から再構築する。そのベースがSnapdragonで、スマートフォンからインテリジェントウェアラブルまで、あらゆるデバイスにパーソナルAIを搭載可能にする。
アモンCEOの基調講演、2029年にも6Gをロンチする計画
クリスティアーノ・アモン社長兼CEOは「6Gに向けたビジョンとネットワークの進化」について講演した。モバイル業界は10年ごとに大きな世代交代をとげる。とくに2Gや4Gのような「偶数世代」に大きな成功を収めており、6Gへの期待は高い。5Gが録画ビデオやリモート会議を普及させたのに対し、6Gはあらゆる場所でAIが活躍する時代のためのワイヤレス技術を普及させるだろう。2034年までに世界のセルラー通信は3〜7倍に増加し、その約30%をAIが占めると予測されている。
2026年は「エージェントの年」になる。これまでのスマートフォンとアプリを中心としたデジタル環境から、人間の意図を自律的に推論し行動するAIセンターのエコシステムへ移行する。コネクテッドカーなどあらゆるデバイスは、このエージェントを介して機能する。エージェントは状況を認識するため、エッジ側で推論に必要なデータを生成し、AIモデルの学習やパーソナライズに活用される。
6Gは主に以下の3つの要素によって構築される。1つめは、接続性だ。低・中帯域で50〜70%の性能向上が見られるが、最大の特徴はAIを使って無線(RF)信号を処理すること。これにより、7GHzなどの高い周波数帯でも3.5GHz帯と同等のカバー率を実現できる。2つめは、コンピューティングになる。ネットワークインフラ自体がAIネイティブへと進化する。通信を提供するだけでなく、基地局からデータセンターに至るまですべての段階でAIデータの処理を行う巨大なシステムになる。3つめは、センシングになる。6Gの全く新しい機能で、無線信号を大規模なレーダーとして利用できるようになる。都市空間の3Dマップ化、ドローンの正確な検出と空域管理、車両や歩行者の判断が可能となり、通信事業者に「環境認識」という新しいビジネスモデルをもたらす。
6Gは、2028年中にデモンストレーションとインフラを整備し、早ければ2029年にもロンチする予定だ。(田中克己)
写真 © 2026 GSMA / MWC






