ガートナージャパンの池田武史リサーチ&アドバイザリ部門バイスプレジデントは10月31日、同社主催IT Symposium/Xpo 2022で、「2023年の戦略的テクノロジーのトップトレンド」について講演した、同社はこれまでビジネスの成長にフォーカスし、デジタルがサポートするテクノロジーをトップトレンドに挙げていたが、経営者の関心がコストマネジメント(コスト削減)と成長(サスティナビリティへの取り組み)、DX(デジタル活用による)になってきたという。背景に、ウクライナ戦争など世の中に予期せぬことが次々に起きていることもある。
そのトップトレンドから、「最適化する」と「拡張する」、「開拓する」の3つのキーワードを導き出し、それぞれを実現する10個のテクノロジーを紹介した。「最適化する」の1つは、デジタル免疫システムになる。不具合が発生したとき、生物には体が反応し、抑え込むメカニズムがある。それをITシステムに取り込むことを指す。デジタルがビジネスに直結するので、デジタルチームの責任が増す。
「最適化する」の2つめは、オーバーザビリティの応用で、オペレーションを最適化すること。システムの出力を観測し、潜在的な脆弱性を発見したり、サービスの課題を発見し、システムを最適化したりする。たとえば、テスラがドライバーの動きを観察し、安全運転を監視することや、北欧の海運業者がコンテナ運送の最適化を図ったりするのが該当する。3つめのAI TR:SMは、AIの信頼性を最適化すること。40%の企業がセキュリティやプライバシーの問題からサービスを止めているそうだ。なので、失敗しても改善していく仕組みにする。たとえば、医師がAI判断で治療すると、どんなことが起きているのか踏まえて、AIを活用する。
「拡張する」の1つめは、インダストリ・クラウドプラットフォームになる。業界ごとに標準化すること。2つめは、プラットフォームを効果的に運用するプラットフォーム・エンジニアリングだ。スキルの高いエンジニアが世界中にいるわけではない。それに代わって、スピーディにタイムリーに対応するプラットフォームを用意する。ゼロから作っていたら、効率化も悪いだろう。3つめは、ワイヤレスの高付加価値化になる。リアルとデジタルの橋渡しをするワイヤレスを活用すること。
「開拓する(パイオニア)」の1つめは、スーパーアプリになる。商品やサービスを買ったら、体験という価値を創り出す。金融や医療などのミニアプリと連携もする。2つめは、学習し、意思決定を支援するアダプティAIシステムだ。問題は、環境変化に弱いこと。新たに学習していくために、AIが自分で進化していくメカニズムにする。失敗したら、なぜかを学習し、課題を解決する。3つめは、メタバースになる。デジタルヒューマンやトークン化された資産などだ。
そして、10個めが持続可能なテクノロジーになる。なぜトップ10に入れたのか。ESG(環境・社会・ガバナンス)の重要性が高まり、CEOの優先順位が上になったからだ。自然環境への負荷をかけすぎて、コントロールが難しくなってもいる。何が起きているのか、オープンにする。だからこそ、サステナビリティが重要になる。ただし、10個のテクノロジー、すべてに取り組む必要はない。まずは持続テクノロジーから始め、「何を見出して、前に進むのか」。自社のビジネスを形作り、ヒントになるテクノロジーを活用すればいいのだという。(田中克己)