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2026.03.09

【MWC26】 モバイル通信展「MWCバルセロナ2026」、AIと通信ネットワークの融合で新たな時代

 通信モバイル業界の世界最大級イベントと言われるMWCバルセロナ2026が3月2日から5日の4日間、スペイン・バルセロナのFira Gran Via(フィラ・グランビア)で開催された。今回の特徴は「モバイル端末と通信回線」から「AIと通信ネットワークの完全な融合のイベント」へ本格的に移行したことだろう。

 出展社数は約3000社で、AT&T、SKテレコム、Orange、チャイナモバイル、NTTグループ、KDDI、楽天グループなど各国の主要な通信事業者と、エリクソン、ノキア、ファーウエイなどの通信機器ベンダーに加えて、AWSやグーグル、マイクロソフトなどハイパースケーラーが通信ネットワークのAPI化やAI基盤を、AI・半導体メーカーのエヌビディアやインテル、クアルコム、AMDなどがAIの演算処理やエッジコンピューティングを紹介する。自動運転やコネクテッドカーを推進する自動車メーカー、フィンテック企業、製造業など「通信とAIを活用する側」の企業も多数出展する。同時開催のスタートアップイベント「4YFN(4 Years From Now)」には、次世代技術を担う約1000社のスタートアップが集結し、900人以上の投資家(総額約600億ユーロの資金を持つ)に向けて熱烈なアピールも行われた。

 3月2日に公表されたモバイル業界が接続中心のモデルから高度なデジタルプラットフォーム、5G SA(スタンドアロン)、AI、オープンAPIを活用したモデルへとどのように移行しているかを示す「モバイルエコノミー2026」によると、2030 年までにモバイル接続全体の 57%が5Gで実行される一方、従来の2Gと3Gはそれぞれ接続全体のわずか1%と5%を占めるにとどまった。通信事業者の収益は、この期間の1兆2000億ドルの設備投資に支えられ、2025年の1兆1900億ドルから2030年までに1兆3600億ドルに増加すると予測する。また、詐欺を含むサイバー犯罪による世界的なコストが、2024年の9兆2200億ドルから2029年には15兆6300億ドルに増加する。ネットワークのソフトウェア定義化とAI活用が進むにつれ、事業者の90%以上が既に脅威環境を「高い」または「非常に高い」とする。

 こうした中で開催されたMWC26に、いくつかのテーマがあった。1つめは、インテリジェント・インフラストラクチャ(Intelligent Infrastructure)だ。5Gネットワークの強化や、6G標準に向けた動き、NTN(非地上系ネットワーク:衛星通信など)などが語られた。クラウドやエッジコンピューティングの進化、量子コンピュータ時代を見据えた次世代データセンターなど、より効率的で強靭な基盤技術についても議論された。

 2つめは、ConnectAI(通信ネットワークのAIネイティブ化)になる。AIはネットワークの根幹を支え存在になりつつある。3つめは、エンタープライズ向けAIだ。「AIの可能性」のフェーズから、実ビジネスでの応用がメインになった。とくに生成AIやマルチモーダルAIを活用し、製造業での予知保全、金融における不正防止、物流のデジタルツインなど、各産業の生産性をどう劇的に高めるかという実用的な展示が中心となった。

 4つめは、デバイスの進化(オンデバイスAIの実用化)だ。スマートフォンなどの消費者向けデバイスは、「ハードウェアの性能」から「顧客体験」へと移行した。結果、端末内で高速かつ安全に処理を行う「オンデバイスAI」が主役となり、パーソナルアシスタント機能やAI搭載スマートグラス、進化したXR(拡張現実)などが生まれる。

基調講演のテーマ、通信とAIがどんなビジネスや社会を創り出すか

 基調講演は、テーマの「The IQ Era(知能の時代)」を現す内容となっている。かつてのような「次世代通信規格(5G/6G)の速度競争」ではなく、「AI、クラウド、衛星が通信インフラと融合し、どんなビジネスや社会を創り出すか」になった。1つは、通信とAIの融合するAIネイティブ・ネットワーク。AT&Tのジョン・スタンキーCEO、Orangeのクリステル・エイドマンCEOのほか、ボーダフォン、チャイナモバイルなど世界の通信事業者のトップが、AI時代の新たな価値創造と次世代展望の展望を語った。「インテリジェントな未来のための青写真」では、ノキアのジャスティン・ホタードCEOらによるパネル「インテリジェントな未来のための青写真」で、AIを活かすモバイルネットワークのあり方を議論した。また、NTTグループの島田明社長兼CEOは次世代情報通信基盤IOWNの光技術によって消費電力を100分の1に削減するなど、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は通信インフラとビジネスが今後どう融合していくかのビジョンなど、をそれぞれれ語った。

 生成AIとエージェンティックAIに関しては、世界をけん引するAI企業のトップがメインステージに登場し、企業や消費者の日常ルールを書き換えるかを議論した。例えば、OpenAI会長兼Sierra CEOのブレット・テイラー氏や、若者に人気のAIチャットサービスを展開するCharacter.AIのカランディーブ・アナンドCEOらが、次世代AIモデルがビジネスや顧客体験をどう激変させるかを語った。

 このほか、クアルコムのクリスティアーノ・アモンCEOがクラウドだけでなく、スマホやPCなど端末側(エッジ)で動く高度なAI技術の未来について、SpaceXのグウィン・ショットウェル社長が地上のモバイル通信網と低軌道衛星がつながる未来(スマホと衛星の直接通信など)について、それぞれ語った。VEONのカーン・テルジオグルCEOらは「コネクティビティとコマースの未来」と題し、新しい収益モデルの青写真やウクライナの通信インフラ復興などに向けた取り組みを説明した。

少し見えてきた5Gの収益化

 5Gの収益化(マネタイズ)は、MWC26において最大のテーマの一つだった。世界中の通信事業者は5Gインフラの構築に巨額の投資を行ったが、スマホサービスの料金競争が激化し、消費者の利用(ARPU:1ユーザーあたりの平均売上高)は頭打ちになっている。そのため、MWC26では「5Gを単純な高速な回線から、具体的な利益を生み出すプラットフォームにどのおゆに昇華させるか」という議論が中心になった。

 収益化への道はいくつか示された。1つは、GSMA Open GatewayとネットワークAPIの拡大で、現在の収益化議論の「本命」と言える。もう1つは、ネットワークスライシングの商業化とB2B市場の開拓だ。1つの物理ネットワークを仮想的に分割(スライス)し、用途に合わせて提供する「ネットワークスライシング」が、PoC(実証実験)の段階を終えて、本格的な商業段階に入ってきた。例えば、放送局は絶対に途切れない超安定した映像中継用スライスを、工場は超低遅延を保証スライスにし、企業(B2B)に対して「通信の品質(QoS)を保証するプレミアムなサービス」を、それぞれ求めている。

 5G の進化版である5G Advanced(5.5G)への期待もある。くに注目されているのがRedCap(Reduced Capability)と呼ばれる軽量版5Gで、スマートウオッチや産業用センサー、監視カメラなど、莫大な数のIoTデバイスを低コスト・低消費電力で5Gに接続すれば、通信回線の契約数が爆発的に伸びる。5G収益化の議論は「どうすれば、消費者がもっと高いプランを契約してくれるか」ではなく、「どうすれば企業や開発者が通信ネットワークを使いたくなるか」になってきた。

 海外報道によると、出展数で最も多かったのはスペインの750社。次いで米国の443社、中国んp350社、韓国の182社と続く。10社超の日本企業は以前から指摘されていることだが、存在感がどんどん薄くなっている。当然のことだ。世界に通用する商品やサービスを創り出せないからだ。そうした中、唯一、仮想RANに期待する声だけは聞こえた。なお、MWCバルセロナ2027は同じ会場で、2027年3月1日から4日まで開催される予定。(田中克己)

写真 © 2026 GSMA / MWC

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