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2023.10.04

ITビジネス研究会が福岡スタートアアップの育成エコシステムを視察

 一般社団法人ITビジネス研究会は9月26日、27日の2日間、福岡市と北九州市におけるスタートアップの状況について視察した。現地のスタートアップ、スタートアップ支援施設、ベンチャーキャピタル、ITベンダー、自治体の5カ所を訪問し、起業家の育成・支援などのエコシステムが成果を生み出し始めていることが分かった。

 最初に訪問したスタートアップのスポーツセンシングは、バイオメカニクスや人間工学といった分野を中心に、人の動作の研究や、製品開発を支援する。具体的には「どれくらい体を動かせるのか」、「バランスは保てているのか」といったスポーツ選手の「カラダ体」の状態を適切に把握し、データに基づいて長所を伸ばす、短所を解消するなどの指導をしていくもの。DXの基本的なストーリーといえる。スポーツに限らず、あらゆる世代に必要なことで、カラダの状態を可視化するツールやサービスを提供するため、帝人と合弁会社を設立もする。澤田泰輔社長の熱い思いを聞いた。

 次に訪ねたのが旧大名小学校跡地に17年4月に設置したFukuoka Growth Nextだ。スタートアップを支援する福岡市の施設で、200社以上が入居する。ハンズオンプログラムやイベント、ピッチコンテストなどを通じてスタートアップや起業家が新たな価値を生み出し、グローバルマーケットへチャレンジすることを支援する。運営は福岡市、福岡地所、さくらインターネット、GMOペパボがあたっている。

 2日目は、福岡を拠点するベンチャーキャピタルGxPartners LLPの代表パートナーCOO 中原健氏に話を聞いた。19年に設立し、これまでに2つのファンドを立ち上げる。1号ファンドは26社に投資し、1社あたり平均3000万円になる。23年6月には福岡銀行系ベンチャーキャピタルと共同設置した「九州オープンイノベーションファンド2号」に、地域経済活性化支援機構QTnetの出資を受け入れて、総額16億円にしたところ。7社に投資する。

 午後は、小倉に構える日本IBMデジタルサービスで九州DXセンター長を務める古長由里子氏を訪ねた。IBMの地域DXセンターの1つで、地域のDX人材育成や先進技術を習得する機会を提供する地域共創DXプラットフォームになる。北九州市と連携協定も結ぶ。大学などに講師を派遣したり、地場企業のデジタル化を支援したりもする。さらに北九州市との連携を強めるため、両者間で人材交流も図っている。

 その北九州市の産業経済局を訪問し、企業立地支援課と次世代産業推進課のそれぞれの担当課長からレクチャーを受ける。次世代産業推進課は、中小企業のDX化支援などに取り組んでいる。目的は生産性の向上と新しいビジネスの創出にある。背景には、毎年5000人の人口減少が続き、政令都市として100万人を割った危機感もあるようだ。中小企業の再生が成長へのカギを握るからだろう。IT専門家ら約50人が伴走もする。一方、企業立地支援課は、IT企業の誘致に力を入れている。この9年間で、様々な優遇策を打ち出し、142社が進出する。毎年、理工系学生3000人を輩出し、多くが市外にいってしまう。市内に雇用を作るとともに、武内市長が打ち出した宇宙、電気自動車、半導体の産業育成を支えるものにする。

 気になったのは、このエコシステムに福岡県情報サービス産業協会が入っていないこと。既存の受託開発会社は蚊帳の外のようだ。次回、スタートアップの育成、支援に力を入れている訪問する地域を検討中だ。(田中克己)

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