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2025.10.31

【シリコンバレー視察2025】富士通の研究部門、スタートアップへの投資・協業体制を強化

 富士通研究所の米シリコンバレー拠点、富士通リサーチ・オブ・アメリカ(FRA)が北米におけるスタートアップとの協業に力を入れ始めている。研究所と富士通ベンチャーズの出向者らが協力し、技術と経営の両面から吟味、事業部門が求める技術を見つけ出す。COO兼CFOの片桐徹氏は「カーネギーメロン大学やトロント大学などとの共同研究も行っている」と、FRA社員80人超による新たな取り組みを紹介する。

 研究所からFRAに出向する内野寛治氏は「Uvanceの5つの技術にそったもの」と、協業対象の技術を明かす。「社内の技術だけでは限られているので、外から技術をもってくる」とし、その一環から米大学との共同研究にも取り組んでいるという。そこでの研究・開発の成果を、スタートアップなどが検証し、価値のあるものにする。

 いくつかの協業パターンがある。1つは、「(AIプロダクトサービス)kozuchiの機械学習エンジンをスタートアップに提供し、同社が新しいサービスを創り出すこと。2つめは、「kozuchi」のエンジンとマイクロソフトのAIコアエンジンを組み合わせる。3つめは、AIスタートアップのCohereのLLMを富士通がオンプレミス用にする。このほかエヌビディアやAMDなどとの協業に関するマネジメントを担うこともある。

 富士通ベンチャーズからFRAに出向中の牛原祥太氏は「シリーズA、Bで、自走し、かつグローバルに出たいスタートアップ」と、協業提携候補を説明する。CVCの同社は17社に投資した約100億円のファンドを使い切り、2025年7月に約150億円のファンドを立ち上げたところ。近く3社の投資先を公表する予定。投資するだけではなく、何等かの権利を獲得する。例えば、3億円の投資のうち、1億円を共同ソリューションの開発に充てる。1年間の独占販売権を得るとかもある。事業部が要求する優先的な権利を獲得するためでもある。

 富士通ベンチャーズのファンドは、富士通から独立し、自ら判断する。なので、3週間で投資を決定した案件もあるという。最近の投資先は、AI技術が中心で、事業部の不足をカバーする先端技術や、富士通が手を出さない領域の共同研究・開発などにもある。もう1つは、社会的にインパクトがあるもの。例えば、二酸化炭素の排出削減やマイクロファイナンス、アフリカでの人材育成などだ。

 投資は1社あたり200万から300万ドルで、フォーカスエリアの1つがエージェントAIだ。もう1つは、複数のエージェントを管理するもの。3つめは、エージェントフレームワークで、他社のエージェントを含めて統合するオーケストレーション機能だ。

 同社はアクセラレータとも協力関係を強化もしている。「早い段階から目を付けないと、投資できないこともある」(牛原氏)。投資先を選ぶのはスタートアップ側にあるからだ。富士通と組むメリットを説くことも重要になる。(田中克己)

写真は左から牛原祥太氏、片桐徹氏、内野寛治氏

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