日鉄ソリューションズ(NSSOL)がこのほど公表した2030年度に売上高5000億円、営業利益1000億円などとする2030ビジョンをどう実現するのか。東條晃己取締役・上席執行役員は「ビジョンなので、具体的な計画は前半の2025年度からスタートする3カ年中期経営計画で着手する」と語り、来年早々に投資家らに示すという。
目標値はまず営業利益を1000億円規模にすることからスタート。そこから営業利益率20%とし、売り上げ5000億円を目指すとした。「営業利益率15%では低いので、ハードルが少し高い20%にした」(東條氏)。2023年度の売上高は3106億円、営業利益は350億円なので、売り上げを約1900億円、営業利益を約650億円をそれぞれ伸ばすために、今のビジネスモデルから生産性の高いビジネスモデルに変えていく必要がある。
東條氏によると、その1つはSIの高度化になる。まずは開発とテストの下流工程の生産性を上げる。「生成AIの活用によって、30%から40%の生産性向上はみえている」(東條)。結果、請け負う仕事量を増やせる。さらにユーザーの要件を聞く段階から生成AIを活用したり、生成AIを取り込んだシステムアーキテクチャ構造にしたりもする。共通プラットフォームを一緒にユーザーと作ってもいく。こうしたSIの高度化が利益率向上の寄与率に最も高いという。
2つめはアセットの活用になる。「当社の強みは業務知見にある。例えば、メガバンクのある領域でトップクラスの知識がある」(東條氏)。これまでユーザーごとに会話しながら、個別システムを作ってきたので、それらから得た知見をモデル化、汎用化し、より広くサービスとして提供できる。「投資効率は上がるし、生産性も高い」(同)。ここが、前半の中計の中心になる。ただし、こうしたサービス提供型の売り上げ比率はまだ1割程度だという。そこで、年商500億から1000億円の中堅企業(製造)にも、同社の地域会社やグループ会社が売り込む、現在、地域会社は5社ある。アセット作りは、手始めに社内のものをアセット化する。提供する際に、補完するサービスを組み合わせもする。
3つはプラットフォームになる。「概念になるが、業種を越えたものの流れを可視化し、効率化する仕組みを提供する」(東條氏)。例えばサプライチェーンだ。鉄の上流から製品までのCo2の排出量を可視化し、証明もする。「環境負荷を下げる意義あるプラットフォームになる」(同)。こうした社会課題の解決には、そこに強いプレイヤーとの連携も欠かせない。
同社が目標達成には、売り上げを年平均7%程度の成長、1人あたり営業利益の大幅な増加も求められる。同社は年に新卒を200人弱、中途を約200人採用しており、このペースを続ければ、従業員は2030年度に2023年度の約3000人増の1万1000人程度になる。目標値から推測すると、生産性は約2倍にもなる。具体策を一日早く聞きたい。(田中克己)