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2024.05.29

浜松スタートアップ視察、危機感から新産業育成を活発化する浜松市

 ITビジネス研究会は5月21日、22日の2日間、静岡県浜松市のスタートアップ視察を行った。浜松市課や浜松地域イノベーション推進機構、イノベーションハブ拠点FUSEなどを訪問し、スタートアップ育成策の現状と未来を聞いた。現地のスタートアップ3社を訪ね、事業展開や協業の可能性も探る。参加した7人はそれぞれの担当者と意見を交わした。

 浜松市はスタートアップ育成に抜きんでる施策を打ち出している自治体といえる。背景には、依存度の高い自動車産業のEV(電気自動車)化による構造変革がある。そのために、新たな産業育成が喫緊の課題になっている。浜松市産業部スタートアップ推進課の田中言彦課長によると、構造変革が市内の製造業に大きな影響を及ぼす可能性があるとし、中小企業による新規事業の立ち上げやそれを支えるスタートアップの育成に取り組んでいるという。スタートアップ支援は充実しており、人材育成から起業、シード、アーリー、ミドル、レイターとステージごとの支援策を用意する。2023年5月に市長に就いた中野祐介氏は、次世代輸送用機器、光・電子、ロボティクスなど成長分野の新事業展開を支援するとともに、働く場の拡充を推進するとしたという。

 浜松市と静岡県、浜松商工会議所で設置した公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構がその実行組織の1つになる。江馬正信専務理事によると、地域のモノづくり企業や情報通信企業などを支援するとともに、中小企業の人材育成や創業、新事業開発などを支援してきた。その中に2018年に設置した次世代自動車センターがある。次世代自動車やカーボンニュートラル、デジタルものづくり、サプライチェーン基盤強化を推進し、中小企業が取り巻く環境変化に機敏に対応できるようにする。センターにはEVを分解したり、リバースエンジニアリングしたりできる施設もある。もう1つはフォトンバレーセンターだ。フォトニクス技術や電子技術、情報技術などを活用し、既存産業の高度化と新規事業の創出を図ろうというもの。

 同機構と同じビルに、起業を目指すワンストップ相談窓口「浜松起業家カフェ」も同機構と同じ3組織が設置した。同施設の運営を担当するマネージャーの白柳健司氏(浜松市産業部産業振興課創業支援グループ)によると、この数年は毎年、1000件超の相談があり、100人前後がビジネスを立ち上げているという。ソフト開発や飲食などが多く、その中心は30代と40代になる。定年近い50代、60代がコンサルタントやプログラムなど設備の要らないスモールビジネスの創業相談も目立つという。浜松市などの融資や助成などを含めえ、6人の相談員が対応する。

 そうした起業や新規事業の創出に挑む人たちが集まり、議論したりする場の1つにFUSEがある。浜松いわた信用金庫が米シリコンバレーにおけるスタートアップのエコシステムをヒントに立ち上げた施設。コワーキングスペースや会議室、ピッチなどのイベント会場、さらにプリンターやレーザー加工機などによる試作品作り施設を用意する。月額1万円で施設を活用する会員は300人近くになる。

 そのFUSEに拠点を持つスタートアップ2社に2日目の22日に訪問した。1社は事務担当が1人しかいないような中小企業の管理部門シェアリングサービスを展開する17年10月に設立したWeWillだ。星野浩大取締役COOによると、経理を軸に法務、労務へと支援を広げ、ユーザーは約70社になる。社員約30人を今期中(24年9月期)に50人に増やす計画。いわば労働集約サービスになるが、料金は月額20万円からになる。新たなSaaSの開発にも取り組む。

 もう1社は、IoTソリューションを提供する19年創業のゼロワンだ。IoTデバイスを使った人検知システムを医療施設向けに展開する。例えば、病院内の患者の混雑などから空気を可視化し、行動変容につなげていくといったもの。室内のどこに患者がいるのかといった混雑などの情報を提供し、患者が予約したりする仕組みも開発する。人検知センサーに自動運転などに使うLiDARセンサーやAIカメラなどを使う。

 3社目のパイフォトニクスは浜松駅から車で約20分のところにオフィスと工場を構える。光技術を融合した製品開発に取り組む同社は、光パターン形成LED照明「ホロライト」を開発、販売する。例えば、工場の危険エリアに光をあてることで、作業者の安全を守るなどに活用する。社長の池田貴裕氏は徳島大学卒業後、浜松フォトニクスに入社し、光関連の研究開発にあたる。この間にMITの客員研究員、光産業創生大学院大学の博士号課程を経て、2006年に同社を創業した。2025年には名古屋証券取引所に上場し、海外市場開拓を強化する計画も練る。(田中克己)

 なお、訪問はFUSEの寺田賢人氏、中小企業基盤整備機構中部本部の守屋尚典氏、瀧下且元氏にお世話になった。訪問先の紹介は可能なので、事務局まで連絡をください。

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