「デジタル・トランスフォーメーション(DX)を真の意味で成功させるには、業務改革の取り組みから始めること」。ガートナージャパンがこのほど、こんな見解を発表したのは、DXの推進に当たる役員や組織を設置する企業が増加しているのに、競争力のあるビジネス価値を創出する抜本的な変革に成功する企業の割合が少ないことにある。
同社によると、主要な原因は、属人的な業務の継続や縦割り型組織による連携の不足にある。なので、日本企業の多くが取り組むDXは老朽化したシステムの刷新、人手不足解消のための自動化ソリューションの導入、などといった目前の課題解決になってしまう。「現行業務をデジタルで再現するだけにとどまる傾向にある」とし、ガートナーは「現行業務を再現するだけのIT投資の90%は迫り来る変化に対応できず、市場競争力を失う」と指摘する。
一方、世界の経営者の最大関心事は、自らのビジネスをいかに成長させるかにある。つまり、競争力のあるビジネス価値をタイムリーに顧客に提供し、ビジネス価値を認めてもらうこと。そのためには「様々な業務をサポートするアプリケーションの見直しや刷新に取り組むことが重要」(川辺謙介シニアディレクター アナリスト)。さらに、「企業は、社内業務の改善が最終的に顧客へ価値を提供するという観点から、業務改革によってもたらされるビジネス成果、すなわち顧客にどのような価値がもたらされるかについて再確認することが重要」と指摘する。
そこで、顧客へ価値提供までの時間を短縮するために、エンド・ツー・エンドでプロセス全体を見渡し、ボトルネックを見極めるとともに、従業員のエンゲージメント・レベルを向上させて、業務効率の改善や労働生産性の向上を図ることとする。(田中克己)