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2022.11.24

IT近代化の幕開けはいつになるのか

 日本企業のITモダナイゼーション(近代化)が一向に進まない。なぜ20年も30年も古いテクノロジーを使い続けるのか。PwCコンサルティングがこのほど発表したDX意識調査「ITモタナイゼーション編」から、理由を見つけ出し、近代化への道を探ってみる。

 PwCコンサルティング上席執行役員の中山裕之氏は「業務の効率化から競争力の源泉になっているITは、ビジネスの俊敏性を高める」と、IT活用と取り巻く環境の変化を指摘する。その象徴は、スイスのIMDが最近公表した2022年のデジタル競争ランキングで、日本が29位と過去最低になったこと。調査項目の「ビジネスの俊敏性」が63か国中62位だったことにあり、ITそのものを作り直すだけではなく、関連する組織と人材、プロセスから変えていくことが求められているという。

 PwCの調査は22年8月に売上高500億円以上のIT近代化に関与する課長以上500人超にWebで聞いたもの。分かったことは、近代化を進める企業はDX(デジタル変革)をCEOがリードしていることと、全社レベルでデータ活用の展開、業務アプリの変更や更新の頻度が高いことなど。ビジネスの俊敏性に役立つパブリッククラウドの活用はある意味、あたり前になっている。

 IT近代化が進まない理由は、デジタルの活用力にもある。別の見方をすれば、デジタル人材の育成ということ。ITスキル教育プログラムだけではなく、その効果にも差がみられる。1つは、自社でITシステムの企画から運用までを展開する内製化による。同社によると、成果に結びつけるポイントは座学と実践にある。座学で得た知識を現場で活かし、経験を積んでいくということ。

 そのためにも、IT部門は外部に委託していた運用業務をパブリッククラウドに移行しながら、自動化していく。経営者は人材育成の旗を振り、その重要性を社内に示す。IT部門のあり方を再定義もする。事業部門から言われたものを作り上げることから、デジタルを活用したビジネス変革を推進する専門家集団になる。

 基幹システムの見直しもする。メインフレームやオープンシステムを20年、30年も使い続けてきた結果、保守や運用、変更を担う人材確保が難しくなっているので、パブリックなクラウドサービスやプライベートクラウドを採用する。ただし、パブリッククラウドの活用には既存システムとのデータ連携など障壁もある。解決にはビジネス優先度に応じて段階的、かつ機能単位に短期間に実行する。変革に時間をかけないということ。2つめは、効率化・標準化を求める領域と俊敏性を求める領域を機能分割し、機能間を疎結合し、依存関係を極小化する。3つめは、パブリッククラウドとSaaSの活用で、保守切れから脱却すること。

 同社はアジャイル開発の推進強化も提案する。その前に、アジャイル開発の間違った解釈を改める。計画を作らない、品質をおろそかにする、変更要求をすべて受け入れる、ドキュメントを作成しない、などだ。アジャイル開発の経験を積むには、実際に起きたことを学び、仮説検証を繰り返す。プロジェクトの関係者による理念などを合意形成し、小さく始めて、自社に適した開発手法を形作っていく。全員で振り返り、次の計画に活かす。そこから適用プロジェクトを増やし、推進する専門組織を立ち上げる。これらステップが成功へのポイントだという。一方、プロジェクト・リーダーは、期間とコストを見積もり、優先順位を提示したり、障害を除去したりもする。

 同時に、「過度な品質を求めない」、「失敗を許容する」、「SIベンダーへの依存を下げる」。ここからITの近代化が始める。(田中克己)

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