大阪ガスがこの3月に「DXによる事業変革」などを盛り込んだ2023年度のDaigasグループ経営計画を発表した。革新的なサービスを生み出すために、DX推進委員会を設置し、データの活用や組織のあり方、働き方改革などにトップダウンで取り組むとともに、定型業務などに可能な限りSaaSを活用し、不足するITエンジニアを競争力の源泉に振り向けていく方向も示したという。
その一翼を担う同社子会社のオージス総研は4月1日に「DX実践道場」を開設する。同道場の館長を務める滝本真吾執行役員・OGシステム開発本部DX統括部長によると、同道場の構想に1年、企画に1年かけて、DXを推進するための従業員のスキル向上などを図っていくボトムアップの仕組みを作り上げた。
実は、道場を立ち上げる前に、大阪ガスの従業員にアンケート調査したところ、「手作業の業務を効率化したい」、「SaaSを活用したいけれど、どれがいいのか分からない」、「ローコード開発ツールでアプリを作りたいけれど、やり方が分からない」、「流行のAIを試してみたい」、「リモートワークが増えて、会議の進め方に悩んでいる」、「DXに取り組みたいが、何をやればよいか分からない」などといった悩みや相談を聞いた。それらの悩みを解決するのがDX実践道場で、「大阪ガスや同グループ(Daigasグループ)の従業員とオージス総研が一緒に体を動かし、汗をかき、小さな成功体験を積むための場」(滝本氏)である。
提供する中心のサービスは「よろず相談」になる。従業員が道場のポータルに悩みや相談を書き込む と、バックグランドの異なる専門相談員約20人が回答し、悩みの解決に伴奏する。「DXとは何か」などといったコンテンツを用意し、「(漫画の)キャラクターからDXを学び、成長していくロールモデルも作る」(滝本氏)。DX推進ワークショップや過去の事例から解決方法や効果などの知識を共有化し、似た相談に素早く対応できるようにもする。
「よろず相談」のシステム面の相談から、解決にSaaSを使うこともある。そこで、従業員が気になる SaaSを試せる環境を整備した。従業員がIT部門に、「このSaaSを使いたい」と申請すると、「セキュリティは大丈夫か」などと尋ねられる。ITプロではない従業員がITツールの詳細を聞かれても、質問に答えるのは容易なことではないだろう。下調べに時間もかかる。そこに、SaaSのお試し環境の意味がある。この6月末までに推奨する20種程度のSaaSを事前に揃えてもおく。「SaaSでできることを、スクラッチで作る必要はない」とし、非競争領域の定型業務などはSaaSに体を合わせて、使う考え方にしたという。一方、オージス総研はSaaSの活用や導入など目利き力をつけるとともに、自前のSaaSを開発もする。
オージス総研は、よろず相談の件数を1年間に100件程度見込む。「うち15件程度の案件がシステム開発に発展する」ことを期待もする。加えて、営業など各部署の依頼から、DXなど経営レベルの発注へと広がる可能性も高まる。相談員らのスキルアップやノウハウの蓄積とともに、いずれ道場の外販による新規顧客の開拓にも乗り出せるだろう。オージス総研がDaigasグループ以外からの売り上げを増やせれば、大きな成長を見込めることにもなる。単体の売上高約460億円、従業員1600人弱の同社は、DX実践道場を通じて、どんな事業モデルを創り出すのか、注目したい。