アクセンチュアなど外資系コンサルティング会社が国内のサービス市場で勢いを増している。彼らの得意とするDX(デジタル変革)支援関連サービスが大きく伸びていることが背景にある。一方、減少し続ける既存システムの運用・保守など従来型サービスに重点を置くSI会社は厳しい状況に追い込まれていく。同社ソフトウエア&サービスのグループマネージャーを務める植村卓弥氏は「コンサルティング会社がSIを強化、SI会社がビジネスコンサルティングを強化する」と、サービス市場をめぐる変化を指摘する。
IDCジャパンによると、国内のサービス市場は2021年の7兆3000億円から2026年に8兆7000億円と、年平均3.4%で成長する(図2)。最も成長率の高いのが、戦略やDX支援などのビジネスコンサルティングとBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などのビジネスサービスで、6%程度と予測する。詳細にみると、ビジネスコンサルティングが8.8%、BPOが3.9%となり、DX支援とそれに関連するサービスになる。植村氏は「この10年、ビジネスサービスが伸びたことで、コンサルティング会社のプレゼンスが上がった」とみる。
一方、ITサービスの年平均成長率は3%前後と、ビジネスサービスを大きく下回る。ITサービスはSIなどのプロジェクトベース、ITアウトソーシングやホスティングなどのマネージドサービス、保守や教育などのサポートから構成されている。市場規模は、既存システムの刷新やクラウド移行、DXに関連する案件の増加と範囲拡大で、2022年は前年比3.3%増の6兆734億円となる。IDCジャパンによると、2023年以降も堅調に推移し、2027年には7兆177億円の規模になる見通しだという。当面は、SAP製ERPのクラウド移行などクラウド関連のサービス需要が市場を拡大させる一方、メインフレーム向けシステム開発など従来型サービスが減少していくという。
驚異的な成長を続けるアクセンチュア
ITサービスとビジネスサービスの両方を取り込み、成長を遂げている筆頭がアクセンチュアだろう。グローバルで1万9000人のレイオフを発表しているが、日本ではITサービスの売り上げを年率20%程度と驚異的に伸ばし続けており、ITサービス市場でトップ10入りもする。デロイトやPwCなど他の外資系コンサルティング会社もクラウドベースのSIを伸ばす。
そんな外資系コンサルティング会社はAWSなどのクラウドベンダーのグローバルパートナーでもある。両者は密な関係にあるが、さらなるシェア拡大には日本の有力SI会社との協業が欠かせないだろう。そこで、IBMなどでエンタープライズを担当した営業や技術を招へいしたり、AWSのようにプロフェッショナルサービス部隊をSI会社の支援にあたらせたりもするという。
一方、NTTデータがクニエ、富士通がリッジラインズと、コンサルティング会社を立ち上げる。陣容はまだ数千人の規模にいたっていないが、外資系コンサルティング会社を含めて、課題は新しいビジネスコンサルティングの展開にある。数カ月かけて戦略などを作り上げて、立派な報告書を作成するだけでは意味はないということ。植村氏によれば、モックアップを作るなど、実装レイヤーを含めてプロダクトを一緒に作るなど、デジタルを駆使し実行を支援する。DXプロフェッショナルサービスのイメージだという。
植村氏は「サービス市場の主戦場は徐々にリフト&シフトからDX支援へと移行しつつある」という。先行するのは、DX支援に強いコンサルティング会社になるが、従来型システムの開発、運用、保守の市場は減少する中で、SI会社もリフト&シフトを取り込む一方、DX支援サービスの品ぞろえを図っている。顧客体験やAI、アナリティクス、人材育成など、ITサービスとビジネスサービスの両方を組み合わせたア新しいサービスの展開が成長のカギになる。(田中克己)