日本のAR/VR市場の普及速度が鈍い。欧米はそれぞれ10%台に達しているのに対して、日本市場は2~3%にとどまっている。調査したIDCジャパンの菅原啓シニアマーケットアナリストによると、大企業病に加えて、労働人口の高齢化が理由だという。欧米は30歳代だが、日本は46歳になり、新しい技術を取り入れることへの挑戦意欲に差が広がっているからだという。図はAR/VRのビジネス利用状況(IDCジャパン調べ)
金額ベースの年平均成長率をみると、VRが世界51.6%、日本36.6%、ARが世界126.3%、日本56.4%になる。日本の伸び率が低いのは、教育や政府などの利用が進まないことにもある。日本の小中学校で導入しているケースはほとんどない。地方自治体や観光での利用も進んでいない。さらに電気やガス、水道など社会インフラの保守への活用もない。トレーニングやゲームでの活用は日本も始まっている。
IDCジャパンは、日本でのVRのビジネス利用の阻害要因を調べた。価格や外注コストを挙げる人も多いが、「収益化が難しい」と「ROIの評価が難しい」との回答も少なくない。ARでは、「体験内容を共有化しにくい」の回答が増えている。いずれにしろ、使ったことがないので、その良さが分からない人たちが多いことにある。結果、「ネガティブな意見に、使い道がイメージできない」という共通した問題がある。業務に落とし込むが分からない。考える力を失っているということだ。
そこで、IDCはVRの活用事例を増やすこと、ARで3万から5万円の低価格モデルを発売すること、体験のできる場を設けること、などを提言する。(田中克己)