「(中国の周近平国家主席が推し進めるグローバル経済圏構想の)一帯一路には事業機会がある一方、留意すべきリスクがある」。PwC中国パートナーで一帯一路事業リーダーを務める黄耀和氏は、3つのリスクを説明する。1つは地政学的なリスクだ。複数の国家が関与するので、政権の交代によってプロジェクトが中止になることがある。たとえば、マレーシアとシンガポールを結ぶ高速鉄道建設は、マレーシアのマハティール首相が取り止めた。
2つ目は資金調達のリスクだ。莫大な設備投資になるので、返済が長期化する。為替も変動し、返済できないこともある。リターンの不確実性もみえてくる。たとえば、中国への返済が難しくなったスリランカは、ハンバンド港の運営を中国に99年間、譲渡する。2つ目はオペレーションリスクだ。複数の企業が関わるので、商習慣の相違など様々な理由からプロジェクトが遅延したりする。「マネジメントチームを作るが、その能力が課題になる。コストが予定よりかかることもある」。そうしたリスクをどう管理するかだ。
だが、黄氏は「中国は強い意思をもって前進させており、憲法にも入れている」と語り、新しい施策を次々に打ち出し、実現させていくと期待する。日本に対しても、「競争相手だが、補完性もある」とし、大きな需要はあるものの、供給が限られているので、チャンスがあるという。そうした中で、今年10月に安倍晋三首相と李克強総理が第1回日中第三国市場強力フォーラムに出席し、両国がより緊密な関係を築き、新たな協力を築いていくことを約束した。日本企業はそれにどう対応していくのか。(田中克己)
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2018.12.04