「世界中でスタートアップが盛り上がっており、日本でも地方からどんどん生まれている」。ベンチャーキャピタルのGxPartnersで代表パートナーを務める中原健氏は、福岡県に本社を構えた理由をこう説明する。人口の増加やアジアとの距離感が短いことに加えて、福岡市長のスタートアップ支援宣言もある。そこに資金供給を含めたエコシステムを創り上げれば、スタートアップの立ち上げスピードを増せるとの判断だろう。
同社は現在、2つのファンドがある。2019年に立ち上げた第1号ファンドは20数社に投資し、その4割が福岡など九州のスタートアップになる。投資エリアを限定しているわけではないので、台湾企業が1社、台湾に進出した日本企業2社にも投資する。1社は日本のコンテンツなどを販売するカプセルジャパン、もう1社はチャットコマースのOne AI
だ。資金10億円の投資はすべて終了し、1社がM&Aをされたところ。これから5年から7年かけて回収する。資金16億円の2号ファンドは2024年5月中旬時点で、11社に投資した段階で、「まだ余っている」(中原氏)という。
同社の投資対象は、資金調達1億円未満のシードからプレシードと初期段階のスタートアップになる。投資金額の上限は3000万円。シリーズA以降への投資は、ふくおかファイナンシャルグループ系VCのFFGベンチャービジネスパートナーズが担う。「福岡だけではなく、各地域のスタートアップをサポートする行政などの人たちと連携し、起業家と早い段階からコンタクトをとるようにしている」(中原氏)。起業家は全国に分散しているものの、「九州ベースのコミットを増やしたい」(同)。加えて、台湾などのスタートアップへの投資を増やしたいという。
投資先はピッチイベントから探し出すこともある。同社らが中心になって運営する一般社団法人Startup GOGOが2014年から年1回、50社程度の参加するコンテンスを開催している。台湾など海外からの参加に加えて、最近は大学発のバイオやグリーンテックなどディープテック系が増えているという。対して、「以前あったWeb3やブロックチェーンなどは減っている」(中原氏)。2023年は12月に東証グロースに上場した小型人工衛星の研究開発に取り組むQPS研究所が福岡で話題になる。同社は出資していないものの、福岡など九州を拠点になるスタートアップの飛躍に期待しているようだ。(田中克己)