韓国のスタートアップがCES2023で、存在感を増した。韓国メディアは「米国に次ぐ約550社が出展」と報じており、少なくとも日本の5倍以上になる。もちろんサムスンやLGなど大手も出展しているが、多くはスタートアップのようだ。政府の支援だけではなく、ソウル市、ソウル大学、さらにはサムスンの支援で、ブースを構えていた。
政府が支援するKスタートアップでは、出展企業を表彰するなど海外進出を積極的に推し進める姿勢をみた。一方、JETROが支援するJスタートアップに40社弱、大阪商工会議所らが支援するジャパンテックは数社だ。ソニーやパナソニックなど大手を含めても出展は100社に満たない。大手も、トヨタ自動車が出展を見送るなど、次世代デジタル社会を実現する新たなソリューションやサービスを描きだせない状況にあるようにも思えた。日本の存在感はどこまで下がるのだろう。
韓国スタートアップの一部を紹介する。ドローンを使って釜山の陸地から船までモノなどをデリバリするマリン・ドローン・テックは釜山に基地を2カ所設け、この1年半に約700件の配達をしたという。同社によると、韓国初の事業で、レストランなどを支援することになる。配達する8割がチキンなど食べ物で、「船で出来立てのものを食べられる」と評価されているという。残りは修理部品などで、料金は1回あたり25ドルから500ドル程度。動いている船にデリバリする技術の確立や海上の法律などを理解しておく必要も欠かせないという。
古い電源からリチウムを取り出し、再利用可能にすることに取り組むのはGreen Mineralだ。1年半前に創業し、米国市場の開拓にも乗り出した。バイオテック技術のEcoTectはごみと化したプラスチックを土にする小さな容器を展示。容器は5年間使えるという。スマホを使って、スマホのイヤフォンを補聴器にするhearDLは、高齢者社会に備えて、高音を出せなどの機能を開発した。血液からサーズなどを診断するバイオセンシング・プラットフォームとチップを紹介していたi-GESTは、血液をチップに落とすだけで、99%の精度でサーズなどを診断できるという。家庭での使用を想定する。
脂肪率と筋肉から体のバランスを測定し、改善などをリコメンドするONESOFTDIGMや、猫の鼻でID管理し、個体を識別するソフトを紹介するPetnaowも出展。韓国ドローンメーカーのNARMAは垂直型の監視用とデリバリ用のドローンを展示する。同社によると、韓国に約20社のドローンメーカーがあり、多くがプロペラ4枚なのに対し、同社は2枚で稼働させる。大型は走行距離5kmで約6万ドル、小型は同1.5kmで約2万5000ドルだという。メタバース関連のビジネスを展開するCALIVERSEも出展。同社はロッテグループだそうだ。(田中克己)