「AIは個別生産から大量生産の時代に」。データ分析ツールを展開する米dotDataの藤巻遼平CEOが11月1日、ガートナー主催IT Symposium/Xpo 2022の講演で、AIの運用を自動化するdotDataOps、すべてのAIを強化するFeaturaFactory、それにビジネスの成果につながるユースケースを作り、AIの大量生産を実現させていく策を説明した。
同社は2018年、NEC中央研究所でデータ分析やデータサイエンスをリードしてきた藤巻氏がカーブアウトする形で誕生した。「AIとデータサイエンスは大きな可能性のあるテクノロジーだが、最大限活用している企業が少ない」と考えた藤巻氏が日本初の分析ツールの開発に取り組んだ。同社によると、19年5月に米フォレスタリサーチがこの分野のリーダーと評価してくれ、これまでに7500万ドルの資金調達もする。
藤巻氏は「データからの洞察がビジネスを変革する」とし、開発した分析ツールの特徴を説明する。たとえば、金融機関がローン商品の販売をはじめるにあたり、どんな人が使うのか仮説をたてて、購入パターンを見つけ出す。それを特徴量というそうだ。大塚商会は営業担当者1人あたりの売り上げと利益を伸ばす「AI行き先案内」を開発した。5000万件の商談データから売り上げにつながる商談パターンを発見し、21年にはこれまでの3倍になる約7万件の商談の成約に成功したという。
三井住友海上火災は、過去7年分の顧客・販売データから、どんな顧客かを理解したうえで、保険とマッチングさせた結果、特約付帯率の成約が2.5倍増えたという。ローソンは顧客の価値観を理解し、商品の売り上げを伸ばすことに成功する。具体的には、POSデータから顧客の行動を価値観としてペルソナ化し、新商品を好む顧客と健康志向の顧客などに分けて、それぞれにフィットするクーポンを発行したら、購入率が12倍にもなった。
次に向かうのは、AIの個別生産から大量生産になる。「1件1件のプロジェクトのROIに苦しんでいる」。しかも、開発したモデルは時間とともに精度が落ちていくので、作り直す必要がある。そこで、AIを大量に作り、一から開発しないようにする。そのために、AIの運用を自動化する。ビジネスの課題、特徴を見つけて、モデルを創り、運用を自動化、効率化する。開発と運用の効率ともいえる。
2つめは、すべてのAIを強化すること。機械学習ツールはコモディティ化、細分化するので、どれがいいのかではなく、適切なものを選ぶ。ERPとCRM、IoT、デジタルマーケティングなどはサイト化されているので、クラウドにデータを集約し、特徴量をファクトリー化する。3つめがユースケースの横展開になる。データのテンプレートも作る。さらにデータに基づいたマネタイズ化する。藤巻氏はデータ分析ツールの新しい使い方を提案する。(田中克己)