「日本の働き方現在地」。アステリアとサイボウズ、Zoom(ZVXジャパン)、レノボ・ジャパンの4社がこんなテーマで市場を調査した。結果を発表した4月7日は初めて緊急事態宣言が発令されてから丸2年で、テレワーク実施率はコロナ前の7%から緊急事態宣言下に29.5%に高まる。ところが、この3月には25.8%と減少傾向にある。ただし、企業規模によって異なる。従業員3000人以上の44.2%に対し、300人未満は17.5%と低い。
テレワークが難しい職種もある。その回答割合は6割にもなるが、実はその内、3割弱がテレワークをしたいと思っている。テレワークできない理由に挙げるのは、1位に「社内関係者とのコミュニケーションが取りづらい」、2位に「仕事以外のことをしてしまう」、3位に「社外関係者とのコミュニケーションが取りづらい」となる。とくに管理職が「社内関係者とのコミュニケーションが取りづらい」との声が多いという。
調査から、働く場所を選ばない職種や働き方になったら、居住条件の変化を求める傾向が高いことも分かった。5人に1人以上が住み替えやワーケーション、移住に関心を示す。とくに20代に高い傾向がみられる。ワーケーションの想定地域は、1位が北海道、2位が沖縄、3位が東京になる。東京が入ったのは、オフィス出勤の可能性を想定してのことだろう。
サイボウズの青野慶久社長は「技術的なハンディはない」と、中小企業も大手と同じテレワーク環境を構築できるとし、テレワークの推進を訴える。課題はオープンなカルチャーなど多様性を受け入れる風土作りにあるという。また、テレワークが難しいとされるエッセンシャルワーカーも、会議や面談、商談などの一部を在宅などリモートワークで可能になる。ZVCジャパンの佐賀文宣社長は「アート引っ越しセンターはテレワークできない職種だろうが、見積もりなどをZoomで行っている」と明かす。
アステリアの平野洋一郎社長は「オフィスを再定義する」と語り、人が働く場所から必要な人が必要な時に集まる場所にしたという。バーチャルオフィス、リモートオフィス、センターオフィス(これまでのオフィス)、サテライトオフィス、ワーケーションの5つの働く場所を用意する。青野氏は「テレワークの定着はマネージャーに必須のこと」とし、多様な働き方を可能にする風土作りを説く。さらに佐賀氏は「リモートワークなど柔軟な働き方が、仕事を選択するうえで重要視される」と続ける。レノボ・ジャパンのデビット・ベネット社長は「自由な働き方ができないのなら転職するという従業員が増えている」と、その分岐点にあることを指摘する。後は、経営者の決断と実行になる。(田中克己)