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2024.12.26

リアルタイム処理、分析を実現するアプリ開発PFの米VANTIQが日本市場開拓に本腰

 リアルタイムの処理、分析を実現するアプリケーション開発プラットフォーム(PF)を展開する米VANTIQ(バンティック)が日本市場開拓に本腰を入れ始めた。2024年12月に来日したCEO兼共同創業者のMarty Spritzen(マーティ・スプリンゼン)氏が「当社のビジネスの約25%が日本からになる」と語り、あらゆるデータを融合し、瞬時に意思決定を可能にするSociety 5.0に取り組む日本に大きな機会を見出したという。

 そこで、同社は日本の大手SI企業にノウハウや技術者育成を支援し、導入事例を増やしていく。日本法人社長にこのほど就任したマイクロソフトやAWSなどで執行役員を務めた佐藤知成氏は「医療と防災、防衛、製造、エネルギー、スマートシティの6分野を重点にする」と明かした。だが、リアルタイム処理を実現する情報システムを構築した事例は少なくないように思える。SI企業も構築事例を紹介しているが、佐藤氏は「リアルタイムのデータをハンドルしたものではない」という。ある時点のデータを入力、処理、出力し、データベース(ストレージ)に記録するので、過去のデータを分析するもの。例えば、気象は刻々と変わるだろう。今のデータと1分後のデータは異なる。生体データもそうだ。検査した時点は悪くなかったのに、10分後に状態が急変するかもしれない。検査結果が分かるのが明日になったら、処置は遅れてしまうだろう。

 バンティックはこのような変化し続けるデータを瞬時にとらえ、変化を検知し、知らせるエンタープライズ・ソフトウエアを開発、提供する。実はCEOのスプリンゼン氏はRDB(リレーション・データベース)の開発に携わり、コンピューティング世界の発展に寄与した人物。ところが、RDBのデータ量が膨大になり、RDBが追求したリアルタイムを難しくした。「ERPとCRMもそうだ。変化した瞬間のデータがない」(佐藤氏)。そこで、スプリンゼン氏は2015年に同社を立ち上げて、複数の変化するIoTセンサーなどのデータをつなぎ、利用できるテクノロジーを開発したというわけだ。「不特定多数のストリーミングデータをテキストデータにし、メモリー上に展開し、組み合わせて処理するテクノロジー」(佐藤氏)。そこに急速に発展するLLM(大規模言語モデル)などAIが瞬時の意思決定を可能にする。

 スプリンゼン氏は社会の仕組みをモニタリングする事例をいくつか紹介する。ICU(集中治療室)にいる新生児をセンサーが監視し、異常を予測したり、異常を検知したりしたら知らせる。「そんなことはできる」と言われそうだが、佐藤氏は「確かに1人、2人の新生児なら可能だろうが、数千人、数万人を監視できるだろうか」と指摘する。別の事例もある。ある地域で大洪水が発生し、Aさんの現在地から「できるだけ早く非難が必要」とスマホに通知する。Aさんの親の住所情報から、その場所は洪水の影響を受けることはない、といった通知もくる。それも新生児と同じで、これまでの仕組みでは地域の何万人もの避難誘導はできないといこと。サウジアラビアでは、設置した約1万のセンサーが人の動きを監視し、不審者を検知する。服装や姿勢などから、その人物の移動を瞬間に検知する。

 佐藤氏もいくつかの事例を明かす。道路のセンサーが交通事故を検知したら、通報するとともに、車の損傷やドライバーの怪我などを予測し、次に何をするか瞬時に予測する。熱中症対策にも活用できる。ある場所は乾燥し、湿度も高いので、そこから早急に離れることを指示する。日陰の場所に移動し、水分をとれば、状態が大きく変わるかもしれない。気象データなどと組み合わせて、危険が発生したら瞬時に本人に伝える。それも何万人も、何十万人に提供する。ヘルスケアでは、退院した患者の見守りに活用する。ウエアラブルデバイスから刻々と変わる生体情報を病院に送る。同様にトラックのドライバーの状態をモニタリングし、異常を予測したりする。画像データなどを組み合せることで、精度がさらに高めるだろう。

 佐藤氏はこうした事例を日本でも紹介していく。災害やヘルスケアなど日本全体のデジタル化に取り組む大手SI企業に一緒に市場を開拓する。「(70歳を過ぎた)スプリンゼン氏は『日本で成功させたい』と言っている」(佐藤氏)。DECからIBM、SAP、マイクロソフト、AWSと大手外資系の執行役員まで務めた佐藤氏は、最後に従業員60人超のスタートアップでリアルタイムの世界を実現させると意気込む。(田中克己)

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