IPA(情報処理推進機構)が10月11日、DX白書2021を公表した。驚いたのは、「全社戦略に基づき、全社的にDXに取り組んでいる」と回答した日本企業が20%超もあったこと。20年12月に中間報告のあった経産省のDXレポート2では約5%だったので、わずか1年弱でDXが大きく進展したことになる。米国とは15ポイント程度の差があるものの、情報通信業や金融業では差があまりない。差が大きいのは、製造業の中小企業にあると思われる。
DX化を成功に導く重要なことがある。1つは、パンデミックやディスラプタの出現をビジネス機会ととられること。こうした外部環境への意識が、日本企業が米国企業に比べてやや弱いところだ。2つめは、協調になる。経営者とIT部門、業務部門が「十分に協調できている」との回答はわずか5.8%だ。3つめは、評価の見直しになる。改善する頻度が少ないし、評価管理ができていない。最も重要なのは、顧客体験価値(CX)の視点が欠如していること。
DXを推進するリーダーに求めるスキルにも問題がある。日本企業は、リーダーシップや実行力、コミュニケーション能力を重視するのに対して、米国企業は顧客志向や業績志向、変化志向、テクノロジーリテラシーを重視する。コミュニケーション能力などを求めるのは、DX化の本質を理解していないからだろう。
だから、日本企業のIT人材確保は一向に進まないのだ。いつになっても「人材不足」と嘆いているのは、必要な人材スキルを分かっていないからだ。調査にあたったIPAの社会基盤センター・イノベーション推進部の古明地正部長は「事業部長など中間層が抵抗勢力になっている」とし、その説得の必要性を説く。システム開発の外注化にも、DXを推し進められない課題があるという。(田中克己)