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2023.08.14

AI活用の第1位は「生産性と収益性の向上」、IBM調べ

 日本IBMが8月9日、米IBM Institute for Business Value(IBV)が実施した調査「CEOスタディ2023」の日本語版を公開した。30カ国以上のCEO約3000人に、AI活用の影響などを聞いたもの。米国のCEO約200人に生成AIに関する緊急調査も実施した。ビジネスの最優先課題に、CEOは生産性と収益性を挙げ、そこへのAI活用を活発化させている姿がみえる。その一方で、CEOと従業員らの間で、活用に対するギャップも生まれる。

  調査によると、CEOの半数(世界48%、日本54%)が、組織の最優先事項に、「生産性と収益性」と回答し、2022年の6位から1位に上昇した。次に、「テクノロジーのモダナイゼーション(近代化)」(世界45%、日本39%)、「顧客体験」(世界44%)と続く。顧客体験は22年に1位だった。

 CEOが今後、3年間に取り組む課題の1位はサステナビリティ、2位はサイバーセキュリティ、3位はテクノロジーの近代化だ。 サステナビリティの具体的な施策と連動した報酬を受け取るCEOの割合は、22年から3倍以上に増加し、23年は50%を超える。その意思決定のうえで、重要な情報やデータは、基幹システムにあるオペレーショナルデータや財務データになる。「社内からの情報」や「個人的な経験」などを重要視するCEOも増えている。

 一方、全回答の約10%を占めるトップCEO(高業績企業のCEOのこと) は、戦略的意思決定を行う際、予測や分析、ベンチマークなどを全CEOより重要視する傾向がある。「自社のツールから優れたインサイトを得ている」とするトップCEOは、全CEOの13倍も高い。データを目標の達成や組織のパフォーマンス、文化などに活かす傾向も強くある。

 生成AIに関しては、調査した米国CEOの75%が「生成AIの良し悪しが競争優位性を決める」と考えている。すでに半分のCEOは生成AIを自社サービスなどに組み込み、43%が戦略的意思決定の活用へと進んでいる。「生成AIで価値が上げる」とするCEOも7割弱もいる。一方、CEO以外の経営幹部らが「社内に生成AIを導入するための専門知識がある」と回答したのは3割弱だ。「責任を持って、生成AIを導入する準備ができている」も約3割で、バイアスや倫理、セキュリティなど、テクノロジーの潜在的なリスクや障壁を懸念もする。

 生成AIの雇用への影響を懸念する声も高まっている。米国CEOの約43%が「生成AIの導入を理由に、従業員を削減または再配置した」と答えている。「今後1年以内に予定している」との回答も28%もある。その一方で、46%が生成AIの導入を理由に「従業員を追加採用」、26%が「今後さらに採用する計画」と回答する。ところが、生成AIが「自社の従業員に与える潜在的な影響を評価したことがある」と回答したCEOはわずか28%だ。

 IBM自身も、従業員28万人の10%にあたる顧客と接していない従業員の生産性が生成AIの活用によって30%向上するとみている。こうした反復作業を担う従業員は、新しいスキルを身に着けなければ、退職に追い込まれるということだろう。そのため、IBMは全社員に生成AIの学習チャンスを提供し、生成AI活用を促す。(田中克己)

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