通信とAIが融合したインフラ基盤を提供するKDDIは「Life Transformation」をテーマに、NWC2025で社会インフラにおける重要な拠点となったコンビニエンスストアが提供する様々なサービスからモビリティ社会、それらの実現を加速させるオープンイノベーションなどのユースケースを紹介する。相澤忠之ビジネス事業本部モビリティビジネス本部副本部長は「AIモビリティ社会、つまり2030年代までにモビリティの未来を創るために、AIと通信で何ができることを模索している」とし、ドローンや自律型ロボット、さらに自動運転技術の応用などを試みているという。
AIのコーナーでは、通信とAIの融合を示す。1つはネットワーク障害を早期に復旧させるための障害データなどの分析から手順を示す。グローバル展開するデータセンター事業(Telehouse)の技術・運用ノウハウを活かし、次世代の液冷技術などを水冷式ラックのデータセンターも紹介する。Experience Telco AIサポートを受けながら、ネットワーク運用者として障害復旧やネットワーク構築をするデモンストレーションもあった。
リテールのコーナーでは、日本の生活インフラと化した「コンビニ」を、AIとテクノロジーでアップデートさせたものを訴える。例えば、お薦め商品を提案するAI商品棚、生活の困りごとを解決するAI相談ブース、スマホレジ、自動品出しロボット、災害点検ドローンなどを紹介する。AIデジタルサイネージが、顧客が手にとった商品のキャンペーンなどを表示する。バックヤードでのペットボトルの棚への補充はロボットが担う。1日1000本くらい売れるペットボトルの補充は店舗にとっても大きな負担になっていたという。
モビリティのコーナーでは、多様なモビリティと人が共存していく未来を紹介する。1つは、AI Mobility Society。AI利用が当たり前の時代の新たなビジネスプラットフォームWAKONXを展開する。日本のデジタル化をスピードアップするというコンセプトから生まれたというWAKONXの注力領域の1つがWAKONX Mobilityになる。目指す未来のモビリティ社会と、それを通信とAIの力でどのように支えていくのか、ユースケースを紹介した。相澤氏は自動運転バスを活用した移動コンビニやロボットによるオフィスへの配達などの実験を通じて、解決すべき課題を明確にするという。
最後のコーナーでは、スタートアップとの協業の成果などを披露する。スタートアップへの出資やパートナーシップが革新的な技術とその応用を生み出すという。例えば、Apple Vision Proを活用した未来の宇宙空間での無重力ショッピング体験や、大型ディスプレイで国際宇宙ステーションの船内を自由に探索するなど、没入感あふれる宇宙体験を楽しめるようにしたという。Idein代表取締役 CEOの中村晃一氏、ティアフォー Founder&CEOの加藤真平氏、AVITA Founder&COOの西口昇吾氏、STYLY代表取締役CEOの山口征浩氏のスタートアップ経営者らがユニコーン目指し議論もした。このほかに「AI活用によるネットワーク運用とAI データセンターの取り組み」や「通信×AIで支える未来のモビリティ社会」、「生成AIとIoTによるリテール業界の革新」などのパネル討論もあった。
また、高橋誠社長が3月3日の基調講演で、1万4600店のローソンにおけるデジタルサイネージなどの活用や清水建設の工事現場への5Gなどの活用事例を紹介する。5Gとデータドリブン、AIを核にしたモビリティやスマートシティでは、JR東日本の高輪ゲートウェイ駅周辺で働く人や住民の約3万3000人を対象にするデジタルツイン・プラットフォームによって、新たな取り組みを展開する可能性を示す。(田中克己)