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NEWS&TOPICS

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2024.03.07

生成AIのインパクト第1回NTTデータ

 生成AIが受託開発を請け負うIT企業にビジネスモデルの転換を迫る。収益源のコーディングを失うからだ。さらにテスト、運用・保守などへと拡大する。そこで、大手ITベンダーと有力IT企業の生成AI活用の取り組みを探った。第1回はNTTデータを取り上げる。

 NTTデータの冨安寛取締役・常務執行役員は生成AIによるインパクトを挙げる。1つはユーザーのビジネスプロセスを変革すること。2つめは、NTTデータ自身の変革、とくにソフト開発の生産性を上げること。ある調査会社は、生成AIは工数を70%削減すると予測するが、NTTデータは要件定義からデプロイまでの工程を25年に50%の削減、2030年に70%の削減を目標にする。2025年の中身は、既存(自動化ツールTERASOLUNAの活用)の仕組みで30%削減し、生成AIでプラス20%と計算する。

 使う予定のコーディング作業支援するツールはGitHub Copilotなどになる。子会社や協力会社を含めて、約5000ライセンスを導入し、その費用を4億円程度と見積もる。それでも「10億円から30億円の削減効果を期待できる」。設計、レビュー、プログラム、テスト、納品というプロセスの中に、GitHub Copilotを使うので、開発プロセスが変わる。「どのようにやるのか模索中だ」という。例えば、どんな文書を生成AIに入力するのがいいのかだ。正確な日本語を入れる必要もある。それらのノウハウを蓄積する。それに、結果が分からない。より良いものにするのはどうするのかだ。

 問題は、信金の共同センターなどに使っている富士通製メインフレームなどのCOBOLのマイグレーションが山ほどあること。これら大規模システム1つ1つのマイグレーションに、約2000人を張り付ける必要がある。その数は数十にもなり、経済安全保障上から中国など海外に頼むわけにはいかない。しかし、日本のエンジニアが少ないので、生成AIに頼るしかないだろう。まずはCOBOLのソースコードのデータを集めて、NTTの大規模言語モデル(LLM)tsuzumiに学習させている。

 もう1つ大きな問題がある。コーディング作業は減るものの、テスト工程が増えることだ。「AIが作ったプログラムを信じていいのかということ」。なので、学習を丁寧にする必要がある。どこまでいっても、人の確認がいる。業務のことを理解していることが重要になる。加えて、テストの中身が分からないので、現行システムと開発したシステムを比較するしかない。例えば、同じデータを流して結果をみる。現新テストだ。

 冨安氏は「下請の中小はいらなくなるだろう」と生成AIの影響を予測する。ただし、地方のIT企業は地方ユーザーのシステムを作っているので、そこに生成AIを活用する余地がある。しかも、請負のソフト開発は以前よりも動員力など資本力が必要なくなり、中小会社が生成AI活用で活躍できるチャンスがある。もちろん、業務をしっていることが前提だ。

 最後の問題は、例えば開発時間が半分になると、料金も半分になってしまうこと。余った時間を他の開発に振り向けられるかだ。協力会社に対しても、半分でやるとなるだろう。実は、仕事はたくさんある。「イタリアの遺跡みたいなもので、補修・修理する人がたくさんいる」。遺跡の補修に大型の建機を使えないので、人海戦術、つまり人手になる。そのためにも、「式年遷宮にしないとだめだと思う」と、冨安氏は金融などの大規模システムを改善、改良するのではなく、一から作ってみることの必要性を説く。(田中克己)

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