セキュリティビジネスを展開するアバストが7月21日、「デジタル・ウェルビーイング(健全性)・レポート」を発表した。サイバー攻撃の被害に遭遇するリスク、OSの古さ・新しさ、プライバシーポリシーの有無・曖昧さ・読みやすさなどに関するアバストのデータと、各国のSNSなどインターネットによる議論など自由度を評価する「Freedom on the Net」レポートを利用し、分析したもの。
同レポートによると、オンラインでの自由度が高い国のインターネットユーザーは、サイバー攻撃の犠牲になるリスクが低い。ユーザーの権利侵害や暗号化サービスの禁止、バックドアなどを含む国家による監視、データ収集などと関連するという。対して、「自由ではない国」の場合、1人当たりのGDPが低く、無料のコンテンツやゲーム、映画などを入手するために安全でないサイトを利用するユーザーが多く、結果的にリスクにさらされているという。
同社は、使用するOSと各国のサイバー攻撃リスクとの間に相関関係を確認もできたという。最新OSを使用しているドイツやフランス、イギリスなどの企業は、サイバー攻撃から防御されている様子が伺えるという。一方、インドネシアやトルコ、ベラルーシなど、オンラインでの自由度が低い国は、1人当たりのGDPが低く、古いOSを使用する傾向があり、サイバー攻撃リスクも高くなっている。自由度が高い国で、期限切れのOSを使用するユーザーは28%なのに対して、「一部自由な国」は38%、「自由でない国」は41%と高くなっている。
デジタルの自由度が高い国に住む人々はサイバー攻撃を受けるリスクは低いものの、プライバシーポリシーはインターネットの自由度が低い国と同様、曖昧さや読みにくさが課題となっていることも明らかになったという。プライバシーポリシーの準備に関しては、「自由度が高い国」のWebサイトの70%に対して、「一部自由の国」は52%、「全く自由でない国」は47%だった。日本では、84%のWebサイトがプライバシーポリシーを準備しているが、「曖昧で読みにくい可能性がある」と同レポートは指摘する。「プライバシーポリシーは存在するだけでは、十分なプライバシー保護が保証されているわけではない」ということ。ちなみに、日本のWebサイトのプライバシーポリシーが最も読みづらいとの回答は「自由な国」の中では最も多かった。
同社は、新型コロナウイルスの拡大により、世界中の人々がこれまで以上にインターネットを利用するようになるとともに、「誤情報の拡散や詐欺やサイバー攻撃、政府による権威主義的な戦術などの脅威が増加している」と警告する。(田中克己)