世界のフィンテック・ベンチャー企業への投資額は、18年に前年比2倍超の553億ドルに達した。アクセンチュアの調査によると、日本も過去最高の前値比5倍の5億4200万ドルになったが、米国の30分の1、中国の50分の1にとどまる。
日本の投資額が少ないのは、金融機関の脅威が存在しないことにある。世界では規制や資本に関するプレッシャー、オープンバンキングで激化する巨大テクノロジー企業やネオバンクなど新規参入企業が次々に登場する。だが、「日本はすべて便利なので、資金の必要性がない」(中野将志常務執行役員)と思っている。フィンテック・ベンチャーも少ない。企業の新陳代謝や人材の流動性が低いこともある。メガバンクはいまだに力を持つ。
だが、米中のイノベーションが進み、便利さが日本を上回る日はすぐに来る。アクセンチュアは「チャンスはある」とし、手始めに人口減少など社会課題先進国としての課題に取り組むことを提案する。金融の規制緩和も段階的に進んでいる。同時に、これまでの企業起点から顧客起点にシフトさせる。コスト削減や生産性向上に投資するのではなく、顧客が悩んでいることを解決することに資金を振り向ける。そこから改革が始める。(田中克己)