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NEWS&TOPICS

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2026.03.11

【MWC26】エリクソン、通信インフラを根底から支える通信技術をアピール

 スウェーデンの大手通信機器ベンダー、エリクソンは通信事業者に通信インフラを根底から支える最新技術をアピールする。今年のメインメッセージは「AIと自律型ネットワークによって、通信のあり方をどう再定義するか」だ。

 1つは、AI主導の完全自律型ネットワーク。人間が手動で管理するのではなく、ネットワークが自ら考え、最適化するエージェントAIの本格導入を推進する。最近、外部機関(ABI Research)で世界No.1の評価を受けたネットワーク自動化プラットフォーム「EIAP」をメインに据え、AIが自律的に運用効率化することを実践もする。

 2つめは、AI×5G SAによる「通信品質のパーソナライズ化」になる。台湾の通信事業者Far EasToneや中国スマホメーカーOPPOと共同で、「AI駆動の5Gスタンドアローン(SA)エコシステム」のデモを実施。これはネットワークスライシング技術(通信の用途に合わせて回線を仮想的に分割する技術)とスマホ側のAIを連携させ、「遅延のないゲーム通信」や「安定したライブ配信」など、それぞれに応じた通信品質をオンデマンドで保証するもの。

 3つめは、次世代通信6Gに向けた空間認識技術。通信基地局の電波を使って、周辺の物理的な物体や空間を知覚する「ISAC(Integrated Sensing and Communication:センシング統合通信)」という6Gのキーテクノロジーを紹介。「ただ通信する」だけでなく「ネットワーク自体がレーダーのように空間を捉える」未来のコンセプトだという。4つめは、モータースポーツ×5Gのライブデモになる。GSMA主催の特設ショーケース「CircuitX」にて、テレフォニカやNTTデータ、フォーミュラE(電気自動車レース)と、エリクソンが提供するライブ5Gネットワークを使って、レースカーのリアルタイムデータ送信や遠隔運転、ドローン連携など、超低遅延・大容量通信を使ったモータースポーツの未来を実演する。

エクホルムCEOが5G SAへの移行とAIの統合など今後のビジネスモデルを語る 

 社長兼CEOのボリエ・エクホルム氏はMWC26オープニングブロードキャストで、通信業界の最新トレンド、5G SAへの移行とAIの統合、そしてAT&Tとの戦略的パートナーシップと今後のビジネスモデルのあり方を語った。

 現在のネットワーク業界は、いくつかの大きな課題をかかえている。1つは、IoTとデータの爆発的な増加だ。多種多様な端末や大量のセンサーがネットワークに接続され、データが継続的に収集・活用される基盤が形成されている。もう1つは、ミッションクリティカルな基盤の整備。通信ネットワークが高度な安全性を求められ、公共サービスや防衛領域までに深く関わるインフラに進化しているからだ。

 これら変革を支える技術の中核が5G SAネットワークになる。従来のNSA(ノンスタンドアロン)環境からSAへ移行することで、クラウドベースの柔軟なアーキテクチャが実現される。これにより、ネットワーク自体がAIに最適化され、企業や公共機関の多様なニーズに応えることが可能になる。ビジネス面では、単一の利益を奪い合う従来の競争から脱却し、パートナー企業と広く連携して業界全体の収益を拡大していくエコシステムの共創へと進化させる。

 AT&Tとの戦略的提携とオープン化の進捗について、AT&TのCEOであるジョン・スタンキー氏と対談し、ネットワークのクラウド化に向けた移行は順調に進んでおり、「2026年末までにはトラフィックの70%がオープンアーキテクチャ上で処理される見込み」などと説明した。ただし、この変革を完了させるためには、インフラの整備だけでなく、運用プロセスや組織の考え方を抜本的に変革する必要がある。2人はこうした課題を共有し、6Gを見据えた5G SAの重要性とセキュリティについても語る。ゼロトラストアーキテクチャの導入など、デジタルスタック全体に対する高い信頼性と安全性の確保が急務となっている。さらに次世代通信6Gへの期待が高まる中、AIと通信ネットワークの高度な統合といった6Gのコンセプトの多くは、実は現在の5G SAで実現可能と指摘し、将来の技術をただ待つのではなく、「まずは5G SAの展開を加速させることが、結果的に未来の技術基盤につながる」と主張する。

 通信の歴史において、アレクサンダー・グラハム・ベルによる特許取得と、エリクソンの創設はともに1876年で、2026年はちょうど150年の節目を迎える。両社が通信の世界を引っ張ってきたが、「過去150年存続したからといって、次の10年が安泰なわけではない」と楽観していないという。過去の成功や現在のビジネスモデルからあえて脱却し、「今が次なる150年の初日」というベンチャー精神を持って、進化し続ける姿勢が未来を創る条件と締めくくる。(田中克己)

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