ITビジネス研究会は7月29日、日立ソリューションズでチーフAIビジネスストラテジストを務める北林拓丈(ひろたけ)氏を講師に招き、「シリコンバレーにおけるスタートアップ発掘と目利き」をテーマにした講演会を開催した。北林氏は、同社が推進する米国スタートアップとの協業戦略について、現地のVC(ベンチャーキャピタル)などとの関係性を築く「インナーサークル」への参入が成功の鍵だと語った。
同社はシリコンバレーに拠点を構え、先進的な技術やサービスを持つスタートアップとの協業を進めている。これまでに生成AI関連など79社(2025年6月時点)との協業を実現し、日本市場へ展開してきた。
2020年から23年まで現地に駐在した北林氏は、自身の経験から「インナーサークルに入らなければ、有望な協業先の発掘は進まない」と指摘。その具体的な手法として、現地のVCに出資することで最新の業界トレンドやスタートアップ情報を得たり、キーマンとの面談機会を設けたりしていることを紹介した。また、スタートアップ側には日本市場での販売網やユースケース創出といったメリットを提示し、相互利益の関係を築いているという。
さらに北林氏は、同社がシリコンバレーの起業ノウハウを社内に取り込む「スタートアップ創生プロジェクト」を2020年から手掛けていることを説明した。これは、社員自身の事業アイデアを北米市場で検証し、起業へとつなげる人材育成プログラムで、社内からのイノベーション創出も目指している。(田中克己)