NECが11月6日、CxOレポート「DX経営の羅針盤2023」解体新書を公表した。同社 コンサルティングサービス事業部門マネージングディレクターの井出昌浩氏は「トップがビジョンと、その実現する戦略を説明すること」と、「変革を業務に落とし込み、実行する人材」の2つがDX推進のカギになることが調査などから分かったという。
同レポートは約200人のリーダーらにアンケート調査し、さらに41人のCxOに個別インタビューし、個別企業の取り組みを整理したもの。「各社が孤軍奮闘している取り組みを共有し、DXをドライブする」と、レポート作成の意義を説明する。デジタル化の取り組み状況を自己申告で聞いたところ、DX初期レベルの「業務のデジタル化」は約84%、「意思決定のデジタル化」は50%弱も着手している。DXの本質といえる「ビジネスモデルの変革」に着手したのも40%弱もある。驚くべき高い数値だ。
その一方で、デジタル人材不足を課題にする企業が7割もある。「DX企画部門の人材不足」と回答したのが131社、「DX実行部門の人材不足」との回答も148社もあった。人材の投資効果が出ている企業はわずか5%超だ。「本当にビジネスモデル変革に取り組んでいるのか」と思ってしまう。経営者は目指すビジョンとそれを実現する戦略を示し、実行に移せているのかだ。
そもそも経営者に危機感がない。DX担当者をアサインするものの、「DXをやっています」というポーズを外にみせているだけではないのか。従業員も「なぜ、やり方を変えるのか」となり、自分にメリットのない変革を拒む。井出氏は「変革できる最後のタイミングだ」と訴えるものの、決定打に欠ける。円安など外部環境の変化を挙げるが、日本企業はコスト削減だけに走り、ビジネスモデルの変革へ進めない。黒船の襲来を期待する声もあるが、1人あたりのGDPランキング31位に転落する日本市場はすでに大きな魅力を失っていると言われている。日本のスタートアップが破壊を起こす道しか残っていないのだろうか。(田中克己)