「SIビジネスが曲がり角にきている」。情報サービス産業協会(JISA)の横塚裕志会長が7月5日の会見で、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査で2017年10月からSI市場が減少し続けていることに危機感を募らした。減少する理由はいくつか考えられる。1つは、みずほファイナンスなど金融機関の大型プロジェクトが終了したこと。2つめは、クラウドに移行した企業が増えたこと。アクセンチュアら有力コンサルティング会社が上流から下流まで手掛けて始めたことも、既存IT企業に大きな影響を及ぼし始めているという。
その一方で、IT人材不足が叫ばれている。とくにAI人材は世界で70万人、日本で4万人超不足しており、その争奪戦が始まっている。そうした中で、「政府が中国やインドなどの高度ITエンジニアを呼び込み、人材不足の解消を図ろうと検討している」と、ある業界関係者は明かす。AIやIoTなどの技術を駆使するスタートアップらの台頭する中で、伝統的な請負ビジネスから脱却できないIT企業は、存在価値を失うかもしれない。JISA幹部は会員企業にデジタル化対応への意識改革を迫っているが、ビジネスモデル変革を遂げた会員企業はあったのか。たとえば、働き方改革に熱心と思われている有力IT企業の経営者は、外部の取材にいっさい応じないという。中期経営計画にサービスビジネスへのシフトを謳っている大手IT企業もその詳細を説明する段階にないという有様だ。方向は分かったが、具体策がないのだろう。
「SIビジネスによる成長に限界がある」。多くの経営者はそう認識しているが、新しいビジネスに乗り出さない。経営者の決断力、実行力に問題がある。「自分が経営者の間に倒産することはありえない」と楽観視もする。変革を恐れていることもある。そう思ってしまう。(田中克己)
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2018.07.12