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IT最新事情

2018.06.29

デジタル・ビジネスの現実

「デジタルは止まらない」。ガートナジャパンの鈴木雅喜氏は同社主催セミナーで、「企業が変わらなくても、社会が先に変貌する」と語り、デジタル・ビジネスの推進を訴える。たとえば、単純なネット商取引が小売業にインパクトを与えたが、さらに高度なネット上の仕組みは全業種に大きな影響を及ぼすだろう。
 デジタル・ビジネスとは、新しいテクノロジーの複合によるビジネス革新をすること。全く新しいビジネスモデルを生み出したり、既存ビジネスを革新したりする2パターンがある。単にモバイルを活用するとか、クラウドを利用したとかはデジタル・ビジネスとは言わない。これまでやれなかったことをやれることなので、戦略的なビジョンがいる。鈴木氏は「方向性を定めて、常に見直す。失敗と修正を重ねる。最初は小さなチームでスタートし、速く回す」などとデジタル・ビジネス推進体制を提案する。
ガートナーが「アマゾンやグーグルが自社市場乗り込んできたら」との質問に、「自社が破綻する恐れがある」と12.2%が回答する。「破綻しないまでも、かなりの浸食を受ける恐れがある」(35.9%)、「自社のビジネスの成長が奪われる」(23.9%)などとなり、4分の3近くが危機感を抱いていることが分かった。ところが、実際のデジタル・ビジネスに取り組む日本企業は1割強程度で、多くの企業が研究・情報収集、アイデア探索、実証実験にとどまっている。
デジタル・ビジネスを進めるために越えるべきハードルがある。1つ目は、経営者らの理解。IT管理者の25%は「経営者はデジタル・ビジネスを理解していない」と理解度の低さを問題視する。「理解しているが、半信半疑」とする管理者も38.4%になる。2つ目は、テーマの探索。アイデアは生まれるものの、従来の延長線上のアイデアが少なくない。そこで、外部人材を登用など入れ替える。革新的なアイデアがあったら、すぐに実証実験に取り組む。
3つ目は、稼働への準備だ。顧客とエコシステム、ITシステム、モノ、データ分析の5つのビジネス領域から検討を始めて、デジタル・ビジネスの青写真を描く。その推進者となるイノベータを探し出す。たとえば、「今のままではだめで、将来を変えたい」と強く感じている人、リスクを経営陣に求めるのではなく、自分で負い、周りを安心させる人、抵抗勢力と向き合える人、などになる。もし見つからなかったら、自らがイノベータになる。
IT部門も変わる。テクノロジーの参謀役になり、全体像の設定・把握と最適化の役割を担う。探索活用や実装もリードする。もちろん人材育成、確保もする。そうしたことを通じて、デジタル・ビジネスに乗り出す企業が増えていく。(田中克己)

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