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NEWS&TOPICS

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2025.03.11

[MWC2025]基調講演、5Gやクラウド、AIからビジネスの可能性

 MWCバルセロナ2025では、数多くのテーマで基調講演が行われた。コネクティビティ業界からは5Gやクラウド、IoT、AIなどについて、さらにモバイルやインテリジェント、コネクテッド・テクノロジーの将来とビジネスの可能性についての議論もあった。GSMAの資料を基に作成した。

 オープニングの基調講演「新たな未来へのゲートウエイ」では、オープンゲートウエイ・イニシアチブによるAPI連携が可能になり、開発者とクラウドプロバイダーが5Gの可能性を最大限に引き出せるソリューションを開発する仕組みになったという。2025年には12億人が5Gを利用し、デジタル経済を牽引する時代に入る。

 「接続性を超えて、通信事業者からテクノロジー事業者へ」では、各地域の大手通信事業者がAIやクラウド、5Gスタンドアロン(SA)の融合を活用して接続プロバイダーから総合的なテクノロジー事業者へ転換することを議論。そこには、新しいビジネスモデルと強力なパートナーシップ、AI、クラウドベースのサービス、最先端技術への投資が必要になるという。

 「欧州のデジタル未来を推進、リーダーシップの実践」では、欧州の大手モバイル通信事業者のCEOらが一堂に会し、デジタル化の課題から戦略、デジタルヨーロッパの構築に関する議論をし、欧州の競争力を強化する道筋とデジタル統合した未来を実現する戦略を説く。

 「AIの最前線、変革のビジョンと社会的影響」では、AIが社会や生活をどのように変え、ビジネスのやり方を変えるのかをテーマに議論する。生活の革命から、AIと人間の共生までも考える。未来学者のレイ・カーツワイル氏は、AIによる人類の進化を探り、AIと人間の共生など人類の未来を形作る倫理的問題を指摘する。

 「テクノロジーのゲームチェンジャー」では、ヘルスケアや製造からAI、ハードウエアなどのテクノロジーを再定義する業界リーダーによる世界を変革させる画期的なイノベーションについて洞察する。その1人、アジリティ・ロボティクスCEOのペギー・ジョンソン氏は、人間とロボットのコラボレーションの未来に向けた方法として、二足歩行ロボットによるヒューマノイドRaaS(Robots-as-a-Service)による倉庫業務の変革を提示する。次の進化はロボットを家庭環境に導入することである。そこでは「安全性が今のヒューマノイドロボットの最大の課題である」と強調した。

 「グローバルシフト」では、テクノロジー覇権をめぐる競争がイノベーション、セキュリティ、世界経済の未来をどのように変えるかを議論する。特に米中の技術競争が激化する中、地政学と技術の交差点における変化する力関係を取り上げる。半導体の戦略的重要性から新しいAIモデルの影響までも取り上げる。

 「イノベーションの実践」では、AIが従来型ビジネスモデルをどのように再形成し、破壊し続けるのか議論した。1つは、メディア業界への影響である。AIが世界中のニュースルームをどう再定義し、新しいビジネスモデルを生み出すのか。もう1つは、元セールスフォース共同CEOのバレット・テイラー氏によるAIエージェントがビジネスや企業をどのように変革しようとしているのかを探った。

レノボCEOのヤン・ユアンチン氏も登壇し、ユーザーの経験を利用して推論を反映するパーソナルAIツインの可能性や、AI PCの台頭を予測する。今後3年間でパソコンの80%がAI PCになるという。

米技術依存を問題視する議論も

 ミストラルAIのアーサー・メンシュ氏は、欧州大陸の米国技術への依存度を下げるにあたって、欧州の野心を高めることを求めた。通信事業者が「データセンターに投資してハイパースケーラーになる」ことも示唆し、注目を集めた。

 GSMAによると、地政学も大きな話題となったという。専門家らが米国のトランプ大統領の2期目におけるAIの発展と、それが欧州と世界市場に与える影響について議論した。規制とイノベーションの問題が取り上げられ、Hyacinth AIのCEO兼共同創設者であるマーク・ソモル氏は「トランプ政権が金と権力に焦点を当てていることに疑いようがない」と指摘し、AIへの投資による利益は「まず大手テクノロジー企業になるだろう」と述べた。

 だが、欧州外交評議会のホセ・イグナシオ・トレブランカ氏が指摘したように、欧州と世界の他の国々は現段階で必ずしもAIへの投資やイノベーションをリードする必要はなく、AIの応用など他の分野で追いつくことができる。一方、ソーシャルウェブ財団のエグゼクティブディレクターであるマロリー・ノーデル氏は「競争が激しいためAIは現在サイロ化された状態で開発されている」と指摘し、企業が協力するインセンティブが全般的に欠如していることに懸念を表明した。(田中克己)

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