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2023.07.10

TDCソフトがエンタープライズアジャイル事業を強化する狙い

 中堅SIのTDCソフトが7月4日、エンタープライズアジャイル事業強化策を発表した。目的は、プライムの顧客開拓と生産性の向上にある。実は、前社長の谷上俊二氏が19年4月からの中期経営計画で、「Shift to the Smart SI」を打ち出し、次世代SIへの旅路に出ることにした。

 ところが、生産性がいっこうに向上していない。19年3月期の売上高259億6400万円、従業員1545人から23年3月期に売上高327億3900万円、従業員1972人と順調に拡大しているように思えるが、1人あたりの売り上げは19年3月期が1680万円、23年3月期が1660万円と横ばい状態だ。スマートSIをうたったものの、人月ビジネスからの脱却がなかなか進んでいないようにみえる。NTTデータと富士通の2社への依存度が高いことにもあるように思える。

 そうした中で、19年6月に社長に就任した小林裕嘉氏が22年度から新中計で「Shift to the Smart SI Plus」と、プラスを加えた。プラスの1つが最も成長を期待されるコンサルティングになる。目を付けたのが、米Scaled Agileが開発した組織全体にアジャイルを展開していくためのフレームワークSAFeだ。19年に同社のブロンズパートナーに、20年にゴールドパートナーになるとともに、コンサルタントを育成し、23年3月末で29人が認定コンサルタントになった。SAFeのトレーニングビジネスも始め、NTTデータや富士通などが受講し、23年7月時点で受講者は1300人弱になったという。


 それを推進するコンサルタントとトレーナーで構成するエンタープライズアジャイル事業本部を23年4月に10数人でスタートさせた。「ビジネスイノベーション本部から外だしし、注力することにした」(同事業本部担当の北川和義理取締役執行役員)。同事業本部長の上條英樹執行役員は「日本企業のビジネスアジリティ向上のために欧米の成功事例を活用し、エンタープライズアジャイル導入の障壁を取り除き、ユーザー自ら時代の変化に対応できる組織作りを促進させる」と意気込みを語る。最大の障壁は「当社は生き残れる」という危機感のなさにあるとし、組織やチームのビジネスアジリティを可視化、分析し、ビジョンや目標の定義、プロセスの見直し、実践トレーニングなどを提供する。そして、「伴走しながら組織改革し、アジャイルな組織にする」。JSRやアドバンテストなど顧客も獲得する。

 同事業本部の目標は、26年度に売り上げ10億円、認定コンサルタント50人などにすること。提供するサービスは、コンサルティングやトレーニングなどで、トレーナーを含めると、1人あたり売り上げは今と大きく変わらないだろう。「アジャイな組織になっても、ユーザーが開発を委託するケースもある」と期待しているようなら、次世代SIへのシフトはまだ先になるように思える。(田中克己)

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