中堅SIのリンクレアがデザイン思考の教育事業に力を入れている。社内向け中心だった同研修の外販に本格的に取り組む。18年8月にデザイン思考を義務教育化した研修には入社4年程度向けプロセス体験編と管理職向けマネジメント編がある。研修など教育事業を主に担うのは、子会社のリンプレスになる。
同社の従業員ら16人が参加した東京・表参道の結婚式場で開催したデザイン思考ワークショップのプロセス体験編の模様を伝える。朝9時に集合し、16人を4グループに分けて、仕事内容や今の気持ちなど自己紹介から始まる。そして、デザイン思考とは何か、その活用事例を紹介する。作業要領をプロセスとして、一般化したデザイン思考は観察から発見、アイデア、プロトタイピング、事業化へと事業構想段階をたどる。目的は、人や社会を理解し、そこにある問題を発見し、解決するための商品やサービスを創り出すこと。とくに価値発見力を磨き上げる。たとえば、「これはおかしい」と思って、新しいことを試すこと。人を観察したり、良好な接点をもったりもする。自分たちが持つそんな挑戦する力などを自分の中から発見、理解し、活用できるようにする。
今回のテーマは、結婚式場での挙式と披露宴を控える新婦の両親が遠隔地から車で来場する体験を提案するというもの。父は54歳、母は51歳などと人物像を設定し、設定人物の立場で不便に感じること、素晴らしいと感じたことなど気づきを得たシーンを、写真に撮ったり、関係者にインタビューしメモを取ったりする。その観察にランチを含めた1時間30分程度とり、行動と観察から気づいたことを付箋に書き出していく。書き出す内容は事実(発言)と感情、思考に分けて、3つくらいのストーリーを仕立てていく。
そこから解決すべき問題を定義する。本当にやりたいこと、大事にしたことなどだ。そこに電気も水道のないような過疎地における未熟児の医療設備に関する動画をみせる。多くの未熟児がなくなる中での解決策は、病院や設備の設置ではなく、未熟児を長時間保温するための保温器を開発することだとし、その取り組みを紹介する。再び、新婦の両親の体験を考え直し、新しいアイデアを出す。さらに1人1人のアイデアを聞きながら、さらにアイデアを増やしていく、最後はグループで1つのアイデアに絞り込み、商品やサービスという評価できる形にし、プロタイプを作成する。各グループが成果を発表し、質問し、17時30分に終了する。参加費は1人あたり3万5000円。新しいビジネスを創り出したりするうえで、デザイン思考は、ユーザー企業だけではなく、IT企業にその重要性が広がり始めているという。(田中克己)