NTTドコモは「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)、Aerospace(宇宙ビジネス)」、「Open RAN」、「エンターテインメント」の3つのテーマに関連技術や機器などを展示し、次世代通信技術の国際標準化活動やグローバルビジネスを推進する考えを示した。「NTN/Aerospace」では、同社の地上約20km上空の成層圏を数日から数カ月に渡って無着陸で飛行できる無人飛行体「HAPS(High-Altitude Platform Station)」など、NTTグループの宇宙ビジネス戦略NTT C89の取り組みを紹介した。
「Open RAN」のコーナーでは、各国の通信事業者との取り組みや、複数のグローバル企業の強みを融合したOREX SAIが提供するOpen RANサービス(OREX Packages)を紹介する。同社とNECの合弁会社であるOREX SAIでCTOを務める安部田貞行氏によると、ネットワーク機器ベンダーが提供するパッケージ製品を導入すると、垂直統合のベンダーロックインになってしまうことがある。そこで、組み合わせをオープンにし、コンポーネントごとに選択肢を持たせ、それらをインテグレーションする仕組みにした。ハードウエアが専用機から汎用機へシフトしたこともインテグレーション・ビジネスの追い風になった。「大手通信事業者は自分でインテグレーションする力を持っているが、中堅・中小はインテグレータに頼むことになる」(安部田氏)。ユーザーにとって、時間もコストも節約になるというわけだ。
インテグレーションするのは、サーバーとクラウド、ソフトなどになる。これらのパートナーと連携し、パッケージ化する。ユーザーが容量など求める性能と価格などからコンポーネントを選定する。光ファイバー環境など国によって、求める要件も異なる。安部田氏は「MWCで初めてアナウンスし、年内にもグローバルで販売を開始する」という。
「エンターテインメント」では、NTTコノキューデバイスが提供する産業向けXRグラス「MiRZA」と、2025年夏以降に発売予定の消費者向けARグラスの商用試作品を展示した。MiRZAは、技術伝承や人手不足、安全確保などの課題を解決するMR技術を用いた遠隔支援ソリューションになる。NTTコノキューの丸山誠治社長は「2024年11月に産業向けの高性能な1号機を出し、今回は消費者向けに重さ60グラムという軽量にしたベーシックな2号機を出展した」と語る。価格も1号機の約3分の1、約500ドルを予定。「メタのレイバンモデルがブームになっている」と消費者向けARグラスの普及を期待する。ただし、「サングラスに1万から2万円上乗せた価格帯なので、メタ製品が売れているのかもしれない」との見方もする。両製品の違いはNTT製コノキューがグラス、つまりディスプレイに表示するのに対して、メタ製品はディスプレイではなく音声で伝える。コノキュー製品はカラー表示でもある。
NTTドコモがARグラスに取り組む背景には、新しい端末への期待にある。例えば、満員電車の中でも便利に使えるものを考えると、眼鏡や腕時計が思い浮かぶだろう。丸山氏は「実は腕時計を試作したが、アップルのスピード感にかなわない」と思ったそうだ。そこで、消費者の声を聞きながら、スマホの次の端末を創り出すことに取り組んだという。その1つがARグラスということ。ナビソフトなどのアプリの品ぞろえも重要になる。ただし、2号機はスマホの付属デバイスという位置づけになる。
このほか相手の感じ方に合わせて感覚を共有するFEEL TECHを出展し、映像や音と共に、登場人物の感情や感覚が共有されるデモなどで、新しいエンターテイメントを体験できる。(田中克己)