ソウル科学技術大学教授のイ・グァンソク氏が12月21日、立教大学で「先端技術に潜む闇、韓国におけるプラットフォーム技術社会を解読する」というテーマで講演した。主催は社会情報学会。2010年代以後のAIやビックデータなどの先端デジタル技術を活用した韓国社会の統制を追跡するもの。とくに文在寅政権時代の「第四次産業革命委員会」や「デジタル・ニューディール」など、その後も数多くのIT活性化施策が打ち出された。新型コロナ禍には防疫という名のもと、様々な監視などの実験も行われたという。
グァンソク氏によると、1980年代から韓国のデジタル政策が進展する。社会のコントロール、管理につながるもので、プラットフォームが権力の一部になってきたという。人の知識や生体などのデータを蓄積するデジタル工場が生まれ、それを構築したプラットフォーマに隷属される時代になる。とくに韓国はスマホの普及速度が速かったこともあり、スマホとクレジットカードからコロナ感染者の追跡に活用されたという。政府がパンデミックを都市の防疫安全のためにという名目で実施したとみる。コロナが市民の抵抗なしに、デジタル技術を駆使した監視の実証実験を行った。電車などによる市民の移動経路の把握も実験したという。自宅隔離の感染者が外出したら追跡する。いわばデジタル技術の能力を試したわけだ。
韓国は2010年前後からデジタル化が急速に進む。2009年にアイフォンが発売され、フェイスブックやツイッターが入ってくる。ビックテック主導の社会が構築されていく。その後、NAVERやkakao、LINE、Coupaugなど韓国内にプラットフォームが育ち、利用者のデータ収集、分析をする。「プラットフォームが権力の一部になっている」。
そうした中、低賃金のフリーランスが増えていく。ギグエコノミーとも呼ばれる。例えば、食材などを配達する労働者を時間単位で管理、計測する。ソーシャルワーカーの労災も増えたという。こうした不満はSNSにどんどん書き込まれたが、今は状況が一変する。ページビューを増やし、金銭を得ようとする傾向があるからだ。ヘイトはその1つで、そんなコンテンツばかりになる。
グァンソク氏は今後、韓国版プラットフォームはどうなっていく。合わせて、日本や台湾、中国のプラットフォームを解読し、デジタル社会の変化、労働への影響などを考察していくのだろう。(田中克己)