野村総合研究所が11月27日、22回目になる国内企業におけるIT活用の実態調査結果を発表した。24年9月に大手企業のCIO(最高情報責任者)らを対象にアンケートし、IT投資やデジタル化への取り組みなどについて529社から回答を得た。デジタル化を推進する組織を設置する企業は7割もあった。
そんな企業はIT投資を増やし続けている。「2024年度のIT投資が前年度に比べて増加した」との回答は59.0%だったのに対し、「減少した」との回答は6.9%に過ぎなかった。2025年度のIT投資も、「2024年度よりも増加する」と予想した企業が53.3%もある。ちなみに「減少する」との予想は7.4%だ。
デジタル化推進の課題は、3年前(2021年度)の調査結果と共通すのが「社内人材のデジタル化対応の向上(質的・量的)」を挙げた企業が最も多い」(24年度は64.1%、21年度は56.8%)こと。次いで、「アナリティクス/AI/データ活用のための基盤整備」(49.5%)、「アナリティクス/AI/データ活用の実証と適用」(46.1%)となる。3年前の調査結果はそれぞれ40.3%、35.8%だったので、NRIは「着実に取り組みが進展している」と分析する。ただし、データから価値を引き出すための「データ・マネジメント/データガバナンス」(37.4%)はやや低かった。「自社のビジネスモデルの変革」は3年前より10ポイント以上減って33.0%だった。NRIは「デジタル化推進部門の役割がDXの企画とけん引から、リソースやインフラの整備へと軸足を移している傾向が見て取れる」と指摘する。
生成AIの活用は着実に進んでいる。オフィスワークへの適用では「文章の作成、要約、推敲」(55.8%)、「情報の探索、知識や洞察の獲得」(52.3%)が多かったのに対し、ビジネスの業務領域別の適用で最も多かったのは、「社員やスタッフのサポート」(導入・活用が21.1%、検討が37.0%)になる。まずは社内業務からの適用を始めるということだろう。
一方、AI活用のリスクに対処する施策については、「AI活用に関する国内外の法令やガイドライン等を調査している」(49.6%)、「AIが関わるシステムを利用する際のリスクに対処するための、社内規則やガイドラインを定めている」(42.3%)などになる。「AIが関わるシステムをサービスとして提供する際のリスクに対処するための、社内規則やガイドラインを定めている」との回答は17.9%にとどまる。「AIを活用した案件のリスクを評価し判断する会議体や組織を設置している」との回答はわずか6.7%だ。NRIは「規則やガイドラインの実効性を確保するための体制づくりは、今後の課題」と指摘する。(田中克己)