NEC品質・エンジニアリング推進部門ソフトウェア&システムエンジニアリング統括部の矢野尾一男氏は「品質と生産性が大幅に向上する」とし、詳細設計から単体テストまでの工程で平均30%の生産性向上を見込んでいる。2024年2月時点、100〜200人のITエンジニアらがGitHub Copilotを使った適用効果を検証し、2024年度から実践フェーズに入る予定。「リスクやパフォーマンス、出力の妥当性などを評価している」(Generative AI Hub、Generative AI Chief Navigatorを務める千葉雄樹氏)。
矢野尾氏によると、要件定義からテストまでの活用を計画する。サービスナウなど学習不足などから活用しづらいものもある。加えて、結果が正しいとは限らない。JEITA主催のソフトウェアエンジニアリング技術ワークショップで、いくつかの課題を指摘した。1つはプロンプトの長さに限界があること。データ量に制限があるので、小さなタスクに分割する。2つめは、推論の能力で、100%正しい回答ではないということ。単純なタスクに分割し、プロンプトの自動生成をする。3つめは、専門知識の不足だ。専門知識データベースを作り、さらに学習させていく。間違った回答を出すので、人のチェックが欠かせない。
「開発の標準化が重要になる」と、矢野尾氏は生成AI活用のガイドラインを作成するという。開発プロセスを整備し、実装から単体テスに利用するが、とくに単体テストの量は多く、工数もかかるので、大きな適用効果を期待できるとする。COBOLからJavaなどモダナイゼーションの効率化も図れる。設計書のレビューや品質管理、分析などへの適用も検証する。
4つめの課題は、請負型開発のユーザーとは生成AI利用の契約が必要になること。納品後、開発の副産物が手元に残らない契約では、活用効果が小さくなるからだ。過去のソースコードをどんどん学習させることで、精度を高める。
NECは上流工程へのシフトも進める。開発工程におけるⅤ字カーブにおける下位の工程は価値を失うとし、作らないSIを目指す。「SIノウハウをテンプレート化する。加えて、独自LLM(大規模言語モデル)に事例を学習させる」(矢野尾氏)。そして、簡単なタスクは生成AIに丸投げし、NECは共通プラットフォームを提供するビジネスモデルにする。(田中克己)