IT資産管理サービスなどを提供するクオリティソフトがクラウド事業に本格進出するため、この10月にクオリティ・クラウドを設立した。両社の社長を兼ねる浦聖治社長は「クラウドに特化したパフォーマンスの優れた、かつオペレーションコストの安価なインフラを提供する」と、AWSなど既存クラウドベンダーとの差別化を図り、SaaSベンダーなどに国産クラウドインフラの導入を働きかけていくという。
同社は1年前、Linuxファンデーションに加盟し、クラウド・ネィティブ技術を推進するクラウド・ネィティブ・コンピューティング・ファンデーション(CNCF)の活動に参加し始めた。CNCFが提唱するコンテナやマイクロサービス、サービスメッシュなどのテクノロジーを活用し、自前のクラウドに最適なインフラを構築するためだ。
そのため、クオリティソフトはクラウド・ネィティブの中核技術でもあるコンテナの運用管理を最適化するオープンソースソフトKubernetesの知見、ノウハウを蓄積するとともに、実績を作り上げてきた。「(自社のサービスをクラウド・ネィティブにのせるなどし)失敗から学び、改善を図ってもきた」(浦氏)。さらに、クラウド・ネィティブの普及に向けて、クオリティ・クラウドへの出資も募る。クオリティ・クラウドの代表取締役会長に就任したDDI(現KDDI)創業者でもある千本倖生氏はその1人になる。賛同者を増やすことと、クラウド・ネィティブの良さをどこまでアピールできるかだ。
両社のCTOでもある長谷川堯一氏によれば、提供するクラウドインフラを使えば、生産性や品質、可用性などが向上し、開発や運用のコストを大幅が削減できるという。CNCFのホームページにも、欧州の小売大手がホスティングコストを80%削減、政府機関が3カ月から8カ月かかっていたリリースを1週間に短縮、など数多くの事例が紹介されている。(田中克己)