ガートナージャパンがこのほど、新型コロナウイルス感染症が拡大する中でのアウトソーシング活用に関する施策を提言した。背景には、さらなるコスト削減の必要性が高まることがある。同社が2020年4月に実施したユーザー調査によると、「今後のIT支出を削減する」とした回答が4割強もあった。その中で、「開発費 (外部委託費)」予算の削減を考えている企業は43.5%にのぼる。実行中のプロジェクトの中断や延期を検討する企業もあるだろう。
同社アナリストの海老沢剛氏は「外部委託コストの見直しが強く求められている」とし、アウトソーシング費用の最適化を図ることを助言する。新型コロナ後にIT投資削減が大きな問題に発展する可能性があるからだ。まずは「外部委託計画」フェーズで、各プロジェクトの重要度を検証し、優先度の高いものに支出を絞る。次に「ベンダー選定」や「契約交渉」のフェーズにおいて、IT企業から適切なコストの提案や契約条件を引き出す。運用保守サービスやサブスクリプションにおいても、利用の仕方や契約条件を改めて見直す。
同社は、プロジェクトの種類を「売り上げ増やコスト削減に結び付けやすいプロジェクト」と「金額的効果に結び付けにくいリスク軽減のためのプロジェクト」の2つに分けて、検討することを薦めている。加えて、ITサービス調達のための選択肢(リモート型開発やクラウド開発基盤、標準的な開発フレームワーク)などを取り入れるため、IT企業にこれらに関する情報開示を求める。
外部委託するIT企業の選定は、「開発プロジェクトの提案依頼書 (RFP)」 に盛り込む項目にもよる。そのためには、まずはプロジェクトの基本情報やサービス要件、IT企業に期待する適性などの情報を開示する。IT企業が回答作成のためのスケジュールを適切に調整できるように、評価プロセスや価格の提示方法をあらかじめ開示もする。そして、IT企業から公平で同じ粒度の提案を引き出すために、共通の回答テンプレートを開示する。
同社によると、開発プロジェクトを厳選し、適切なRFPで最適な委託先を選択したとしても、その後の契約交渉が不調に終われば、コスト最適化は望めないという。RFPで提示された「価格」や「スケジュール」、「体制」の詳細を議論する。具体的な「成果物」を詰める必要もあるという。運用保守サービスに関しては、直近の契約更新時に、委託範囲やサービス・レベル合意 (SLA) を見直す。いずれAI やロボティクスなどを活用し、オンサイト人材の削減などを進めることも必要になるという。
クラウド・サービスにおいて、完全従量課金のIaaS やPaaSは、使用量の減少が即、コスト低減につながる。契約期間が固定されることの多いSaaSは、契約更新時に契約条件を再交渉するだけでなく、契約期間中であっても不要・過剰なサービスの停止を交渉する。こうしたことを通じてのコスト削減も図る。
その一例が、みずほフィナンシャルグループがこの6月に発表したみずほ銀行をはじめとしたシステム運用業務の日本IBMに委託すること。同社子会社の株式を日本IBMに譲渡する形で、運用コストなどを削減を図るものとみられている。(田中克己)