BSAザ・ソフトウェア・アライアンスが4月16日に衆議院第一議員会館で開催したカンファレンス「デジタルガバナンスの未来と世界の潮流」は、興味深いものだった。これを支援したのが、日本の大手ITベンダーではなく、外資系ITベンダーだったこと。マイクロソフトやアドビ、シスコなどが協力し、行政のデジタル化を紹介した。
挨拶にたったIT政策などを担当する平井卓也大臣は、年間7000億円にのぼる官公庁のIT調達を内閣官房に一元化することを改めて示唆した。これまでの発注方法にはいくつかの課題があったという。1つは、発注者側に知見が蓄積されないこと。2つめは、IT予算の6割が維持・保守費になっていること。3つめは、変化に対応できるシステムになっていないこと。それらを見直すのが、審議に入ったデジタルファースト法案の意義でもある。
とはいっても、同法案がデジタル化を一気に進めるものではないようだ。「紙からデジタルへ変えるきっかけとなる最初の取り組みだ」と、平井大臣の発言はトーンダウンする。まずはマインドセットを変えて、コンセンサスをとりながら進める。そして、すべての国民が恩恵を受けられる次世代の基盤にするという。
そのデジタルフォース法案について、小林史明・衆議院議員は「行政手続きをオンライン化すること」と、ビデオメッセージで内容を説明する。「なんだ」と思われる人は少なくないだろう。10数年前から行政手続きはオンライン化されているが、ほとんど利用されていない。そこで、今回の法案ではクラウド化を前提にし、年間400億円を削減する目標をたてる。地方自治体のクラウド活用も後押し、今の職員の半数で今以上の効率な行政サービスを提供する仕組みにすると、小林氏は意気込む。そのためは、AIやロボットなどを活用する。自治体ごとのシステム構築もやめる。共通システム利用の実現を佐賀県多久市の横尾俊彦市長も訴えた。あとは実行するのみだが、佐賀市の基幹システムのオープン化などに取り組んできたイーコーポレーションドットジェーピーの簾宗淳社長は「難しいだろう」という。筆者も課題を理解せずに、デジタル化しても効果はない、という同意見だ。(田中克己)