ガートナージャパンが10月2日、デジタル人材育成の実情に関する調査結果を発表した。24年4月に、非IT部門の社員に対するテクノロジー教育を実施している国内企業や公的機関で、企画・実施を担うIT部門とDX(デジタル・トランスフォーメーション) 部門のマネジメント層を対象としたもので、全社的なデジタル人材育成に3年以上、取り組んでいる企業でも、「業務向上・事業戦略の推進に貢献している」、「実業務でスキルを発揮している」などの具体的な成果を実現している割合は2割にとどまることが分かった。しかも、過半数は成果を得られてない。
同社ディレクター アナリストの林宏典氏は「人材育成が具体的な成果に結実するには、ある程度の期間が必要。だが、デジタル人材育成にかけた大きなコストと時間が成果として回収されていない企業が多いことを示している」とし、成果の実現度に影響を及ぼす4つの要因を挙げる。
1つめの要因は、事業部門の関与が強いほど実成果を獲得しやすいこと。デジタル人材育成に対する事業部門の関与度が高いほど、何らかの成果を獲得しやすいという。そのためには、「DXプロジェクトに既に取り組んでいる、所属員に対し教育プログラムへの参加を奨励しているなど、DXに意欲的な部門長を見つけ、その部門の人材育成を重点的に支援すること」と、林氏はCIOに助言する。
2つめは、実践的な教育手法を採用すると実成果を獲得しやすいこと。デジタル人材育成の教育手法には、「仮想テーマにチームで取り組むケーススタディ型研修」、「自社の実際の課題に取り組むプロジェクト型研修」などの実践的なものが含まれていると、習得した知識/スキルを自ら実践して定着度を高められるという。3つめは、何らかのスキル活用機会が用意されているかどうかで実成果に大きな差が出ること。非IT部門社員が習得したデジタル・スキルの活用を奨励する支援策がある企業は、支援策がない企業に比べて4倍近く高い割合で成果を出しているという。特に影響が大きいものは「デジタル・スキルの習得、活用を人事評価の目標に組み入れている」と「社内副業制度がある」などになる。
4つめは、評価指標が経営視点に近づくほど実成果を獲得しやすいこと。デジタル人材育成の成果の評価指標を、「人材育成活動の指標」、削減時間や開発アプリ数などの「直接の成果指標」、売り上げ増や新技術・特許の取得などの「経営・事業レベルの成果指標」、「定めていない」の4つのタイプに分けて、成果実現の段階別に指標の利用率を比較した結果、成果を出していない企業は指標を「定めていない」割合が最も高い。その一方で、成果を出している企業ほど、多様な指標を定めているとともに「経営・事業レベルの成果指標」を定めている割合が最も高い。「デジタル人材育成の成果の評価は、DX本来の目的である経営・事業レベルの指標で行うべき」と林氏は指摘する。(田中克己)