米クアルトリクスの日本法人が11月12日、年次レポート「2025年消費者トレンドレポート」と「2025年従業員エクスペリエンス トレンドレポート」を公表した。消費者トレンドの調査は23カ国・地域の2万3730人(日本は1199人)の消費者を、従業員エクスペリエンス トレンドは 2024 年 7 月に実施し、同じく 22 カ国・地域の3万5023 人(日本は2077 人)のフルタイムまたはパートタイムで働く 18 歳以上の就業者を対象に実施した。 熊代悟カントリーマネージャ―は「エクスペリエンスの重要が年々高まっている」と、調査の意義を説く。
まず消費者トレンドからみる。調査結果によると、「エクスペリエンスへの期待の高まりが信頼の低下を招いている」ことが分かった。具体的には、「従業員の応対」(54%)、「サービス提供に関する問題」(36%)、「価格に関する懸念」(19%)などで、それが企業に報告されていないこともうかがえる。同社の久崎智子氏は「苦情を含むフィードバックが減ったからと言って、顧客が満足しているわけではない」と、サイレントマジョリティの声を聞くことを指摘する。2021年以降、消費者が良くないエクスペリエンスを企業にフィードバックを提供しなくなっていることなどがある。 「顧客の感情を取得すること」が大切だという。
消費者はAIへの期待過剰から懐疑的な見方へ変化もしている。注文の確認や体調に関する相談など、AIを使用することに消極的になり、顧客サービスに対する懸念も高まっている。主な点は、サービスの質低下、個人データの悪用、人の対応を希望しても対応してもらえない、などがある。「組織が責任を持ってAIを使用するかどうか」との質問に、「あまり信頼できない」との回答は90%にものぼる。同社は「AIが顧客にとって有益であることを、ブランドは積極的に示し、取り組まなくてはならない」と助言する、
AIの組織的な導入・活用推進が急務に
次は従業員エクスペリエンストレンド(EX)だ。同社によると、「従業員は、自社のカルチャーや働き方が、顧客ニーズに対応できるもので、社内で継続的に業務改善を行っている状況においてエンゲージメントが高まる傾向がある」と思っていることに、企業がその期待に応えられていないことが分かったという。市川幹人氏は「最高のEXは、仕事の仕方や意義を通して得られるもの」と指摘する。具体的には企業のパーパスやバリューの浸透、顧客志向の強化、キャリア開発の推進などに関する取り組みが重要になる。
今回の調査では、若い従業員の継続勤務意向が他の年代に比べて低水準だったことも分かった。要因は、キャリア開発のチャンスや自社のバリューに対する共感などにある。加えて、入社までの体験と退職時の体験が、日本が低下している。現在の勤務先での在職期間が 6カ月未満の従業員のうち、今後 3 年以上勤続する意向を示した回答者は48%と半数に満たない。日本の従業員がリーダーを十分信頼していないこともある。従業員との対話が不足していることも考えられるという。加えて、働きやすい環境にすることも求められている。
AI の組織的な導入・活用推進が急務と言われているが、業務に AI を「毎日」または「毎週」活用している日本の従業員は 世界平均の半分の24%にとどまる。理由に考えられるのは、「会社が AI を活用するためのトレーニングとサポートを提供している」との回答が世界平均の52%に対して、日本は 4 分の 1と低いことにありそうだ。使用ガイドラインの作成などでも、日本が大きく出遅れていることもある。(田中克己)