金融機関にデジタル・バンキング・プラットフォームを提供するオランダのBackbaseが11月24日、日本国内の銀行業の意思決定者とリテール(個人向け)銀行利用者を対象とした調査「日本におけるデジタルバンキングの未来」を発表した。新型コロナの感染拡大によって、従来の窓口を中心とするチャネルからデジタル化したチャネルへの変革を喫緊の課題に挙げている。DX(デジタル変革)を加速させたいということ。
同調査によると、銀行業の意思決定者の71%が「日本の人口減少が個人顧客向けビジネスの採算性と成長に、マイナスの影響を及ぼしている」と回答する。また、68%が「組織の経営陣は支店の高いコストについて懸念している」とする。一方、銀行利用者の53%が「スマホ経由でのオンラインサービス利用を好む」と回答し、38%が「スマホだけですべての銀行サービスを完結させたい」とする。
ところが、利用者の18%は自身が利用している銀行がデジタルバンキングサービスを提供しているのか「分からない」、14%が「提供していない」とそれぞれ答える。銀行がサービスを適切に提供できず、日常的な取引や手続きをオンラインで済ませられない場合、33%が「近くの支店に足を運ぶ」とする。
銀行業の意思決定者の56%は、デジタルバンキングに興味がある既存顧客に「情報を提供している」、39%は顧客が支店を訪れてサービスを利用した際には「デジタルチャネルに関する情報を提供している」と回答している。だが、86%がデジタルバンキングを利用する顧客を増加させるためには「消費者に周知を促し、利用率を高めるためのさらなる取り組みが必要」と考えている。
同社はこれらの結果から、銀行が収益性を向上し、競争力を維持していくには、店頭サービスからセルフサービスを中心に据えたデジタル化による業務の効率化を推進することとする。加えて、自社のデジタル化に関する利用者への周知やデジタルツールの使い方の案内といった顧客エンゲージメントを、より高めていくことが重要になるという。
銀行利用者の25%がコロナ禍以前と比べて、「デジタルバンキングの利用頻度が増えた」とする。金融機関もデジタルバンキングの利用者が20%増加したとするが、デジタルバンキングを実現する課題が残されている。銀行業の意思決定者のうち、61%が「現在のシステムとテクノロジーのサイロ化」に問題を抱えており、53%が「古くなったレガシーテクノロジー」を重荷と感じる。同社は、新たなテクノロジーをどのように迅速かつ安全に取り入れ、顧客サービスへと反映させていけるかがカギになる、と指摘する。(田中克己)