電子情報技術産業協会ソリューション事業委員会がこのほど、日米企業のDX(デジタル変革)調査結果を発表した。馬場俊介委員長(富士通理事)によると、3つの違いが分かったという。1つは、DXに取り組む企業が日本の2割に対して、米国が3割だったこと。2つめは、米国の経営者はDXに関与していること。3つめが、IT投資先が米国はマーケティングや市場分析など顧客にかかわることなど外向きなのに対して、日本は内向きの業務改善などで、経営者が関与していないこと。
小堀賢司副委員長(NECソフトウェアエンジニアリング本部長))は「IT予算は日米とも増えているものの、日本企業の投資先は17年と20年で大きく変わっていない」とし、日本は収益改善という従前からのIT活用にとどまっているという。唯一、新型コロナの感染拡大による働き方の変化に対応するテレワーク投資が増えたこと。対して、米企業は新規事業など事業拡大に向けたDX投資を増やす。
とはいっても、数字だけをみると、日米企業のDX化の取り組みに大きな差はないように思える。実は、日本企業でDXに関与する経営者は4割弱にもなる。大きな違いは、DXを支援するITベンダーにある。米国の主役はIBMなど伝統的な企業から、フェイスブックやグーグル、AWSなどITサービス提供企業へとシフトしたのに対して、日本はソリューション事業委員会のメンバーの富士通やNEC、日立、東芝、三菱電機など伝統的IT企業がいまだにIT産業の主役で、新興企業の登場を阻んできた。
つまり、日本企業がDX化に出遅れた原因は、ITベンダーにあるのではないか。その質問に対して、馬場氏は「アンケート結果と同じように、ITベンダーも苦しみながらDXに取り組んでおり、ステータスはユーザー企業と同じ」と吐露する。続けて、「ITベンダーの果たす役割は大きいが、米国でも伝統的なITベンダーはDX化に苦労している」と、IBMなども富士通やNEC、日立などと同じような状況にあるという。
理由の1つは「DXをやらなくてはという危機意識にある」(馬場氏)。既存ビジネスがそこそこ回っていれば、DXを推進する必要はないが、「コロナがドライバーになり、今すぐにDXに着手すべきだ」とする。そうなら、ITベンダー自らがDXのお手本を示すことが必須になる。(田中克己)